大気汚染防止法のアスベスト事前調査義務 完全対応ガイド|2022年4月の報告・2023年10月の資格者要件
公開日:2026-05-25 最終更新:2026-10-11
条文は2026年10月11日に e-Gov 法令検索で確認しました。大気汚染防止法および同施行規則は改正される可能性があるため、最新の法令・運用は環境省 大気汚染防止法 石綿関連情報および各都道府県の所管窓口でご確認ください。
解体・改修工事の事前調査は、規模に関係なく義務です(大気汚染防止法18条の15・石綿障害予防規則3条)。改正大気汚染防止法の施行は2021年4月1日、調査結果の報告は2022年4月1日から、建築物の調査を資格者が行う要件は2023年10月からです。報告をしない・偽ると30万円以下の罰金などの対象です。
アスベスト含有建材の事前調査は、大気汚染防止法と石綿障害予防規則の改正で段階的に強化されてきました。「2023年10月に大気汚染防止法が改正された」と言われることがありますが、改正大気汚染防止法の施行日は2021年(令和3年)4月1日で、2023年10月は建築物の事前調査を資格者が行う要件が始まった時期です。本記事では、条文と厚生労働省の通達で確かめられる範囲で、対象工事・報告・罰則・2026年1月の工作物対応を整理します。

2023年10月に何が変わりましたか?(改正の時期の整理)
2023年10月1日からは、建築物の事前調査を建築物石綿含有建材調査者などの資格者が行うことが必要になりました。調査結果の報告はそれより前の2022年4月1日から、書面と目視の両方で調査することは2021年4月1日から求められています。
石綿障害予防規則の改正(厚生労働省の通達 基発0804第8号の施行期日)と大気汚染防止法の改正を、時期ごとに整理すると次のとおりです:
- 2021年(令和3年)4月1日:改正大気汚染防止法の施行。改正石綿障害予防規則の施行(事前調査を設計図書等の文書と目視の両方で行うことなど)
- 2022年(令和4年)4月1日:一定規模以上の工事について、事前調査の結果を電子システムで報告する義務が始まりました(石綿障害予防規則4条の2・大気汚染防止法18条の15第6項)。アスベスト含有の有無にかかわらず報告が必要です。
- 2023年(令和5年)10月1日:建築物の事前調査を資格者(建築物石綿含有建材調査者など)が行うこと(石綿障害予防規則3条4項)、分析調査を資格者が行うこと(同条6項)が必要になりました。大気汚染防止法施行規則16条の5第2号にも、調査を環境大臣が定める者に行わせる定めがあります。
どのような工事が対象になりますか?

建築物・工作物の解体工事・改修工事は、規模にかかわらず事前調査の対象です。2006年9月1日以降に着工した建物も対象で、その場合は着工日を設計図書等の文書で確かめる方法で調査を行えます。
なお、厚生労働省の通達(基発0804第8号)は、木材・金属・ガラスなど石綿が含まれていないことが明らかな材料を周りを傷めずに取り外す作業、釘を打つ・抜くといった極めて軽微な作業、既存の塗装の上に塗るだけの作業などは、石綿等の粉じんが発散しないことが明らかなので事前調査を行う必要はない、としています(電動工具で壁に穴を開ける作業は調査が必要)。
対象範囲を整理すると次の通りです:
| 工事種別 | 事前調査の要否 | 電子報告の要否 |
|---|---|---|
| 建築物の解体工事 | 規模にかかわらず必要 | 解体部分の床面積の合計80㎡以上 |
| 建築物の改修工事 | 規模にかかわらず必要 | 請負代金100万円(税込)以上 |
| 特定工作物の解体・改修工事 | 規模にかかわらず必要 | 請負代金100万円(税込)以上 |
| 2006年9月1日以降に着工した建物の解体・改修 | 必要(着工日を設計図書等の文書で確認する方法で行える) | 上の規模に当たれば報告対象(報告事項は一部に限られる) |
「うちの建物は新しいから関係ない」と判断するのは誤りです。2006年9月1日以降に着工した建物でも、着工日を設計図書等の文書で確かめる方法で事前調査を行い、記録を3年間保存します(石綿障害予防規則3条3項3号・7項)。特定工作物(煙突・配管設備・焼却設備・貯蔵設備・ボイラー等)は、2026年1月から事前調査を資格者が行う必要があり、産業設備の解体・改修にも影響します。詳細は工作物アスベスト調査の2026年1月義務化ガイドもご参照ください。
有資格者による調査が必要な理由は?
石綿を含む建材は種類が多く、見た目だけでは含有の有無を判別しにくいため、専門の講習を修了した調査者が書面と目視で調査します。見落としは健康被害・行政命令・施工中の作業停止につながりかねません。
有資格者制度の中核は建築物石綿含有建材調査者の3区分です:
- 特定建築物石綿含有建材調査者:すべての建築物の事前調査を行えます。
- 一般建築物石綿含有建材調査者:すべての建築物の事前調査を行えます(特定と同じく、一戸建て住宅・共同住宅の住戸の内部も含みます)。
- 一戸建て等石綿含有建材調査者:一戸建ての住宅と共同住宅の住戸の内部に限って事前調査を行えます。
厚生労働省の通達(基発0804第8号)は、事前調査を行える者を「建築物(…一戸建ての住宅及び共同住宅の住戸の内部…を除く。)」は一般・特定建築物石綿含有建材調査者またはこれと同等以上の能力を有すると認められる者、「一戸建て住宅等」はそれらの者または一戸建て等石綿含有建材調査者、と整理しています。資格保有者の確認は業者選定の大事なチェックポイントです。資格の詳細は石綿作業主任者と関連資格の役割もご参照ください。
また、建築物以外の工作物のうち、石綿が使われているおそれが高いものとして告示で定められた工作物(煙突・配管設備・焼却設備・貯蔵設備・ボイラー等)の事前調査は、2026年1月から一定の要件を満たす者が行う必要があります(厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト)。
電子報告義務とはどういうことですか?

厚生労働省の「石綿事前調査結果報告システム」で、事前調査の結果をオンラインで報告する制度です。解体部分の床面積の合計80㎡以上の解体工事、請負代金100万円(税込)以上の改修工事などが対象で、報告は元請業者が行います。
電子報告システムの概要:
- 利用に必要なもの:GビズID(エントリー・プライムのどちらでも可)
- 報告の時期:石綿障害予防規則は工事を行おうとするとき「あらかじめ」、大気汚染防止法18条の15第6項は調査を行ったとき「遅滞なく」と定めています。報告について「14日前」という決まりはありません(14日前は、次の見出しの届出〔大気汚染防止法18条の17〕の期限です)
- 報告先:システムを使うと、労働基準監督署と自治体の窓口の両方に、書面を持って行かずに報告できます
- 報告する事項:事業者・工事の概要、工事の実施期間、床面積または請負代金、調査をした者、材料ごとの石綿の有無と判断の根拠の概要など(石綿障害予防規則4条の2第2項)
- アスベスト含有なしでも報告は必要です
吹付け石綿や石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材の除去等を行う工事は、報告とは別に、発注者が作業開始の14日前までに都道府県知事へ届け出る必要があります(大気汚染防止法18条の17)。届出書の詳細は解体工事アスベスト届出手順完全ガイドをご参照ください。
大気汚染防止法の報告をしない・偽って報告すると、30万円以下の罰金の対象です(35条4号)。
違反した場合の罰則は何ですか?
大気汚染防止法では、調査結果の報告をしない・偽ると30万円以下の罰金、届出が必要な工事で届出をしない・偽ると3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、作業基準適合命令などに違反すると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。法人にも罰金刑が科される両罰規定があります。
大気汚染防止法に基づく主な罰則を整理します(e-Gov 法令検索・2026年10月11日確認):
| 違反内容 | 罰則 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 事前調査結果の報告をしない・虚偽の報告(18条の15第6項) | 30万円以下の罰金 | 大気汚染防止法 第35条第4号 |
| 特定粉じん排出等作業の届出をしない・虚偽の届出(18条の17第1項) | 3月以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金 | 大気汚染防止法 第34条第1号 |
| 届出対象工事の除去等の方法に違反(18条の19) | 3月以下の拘禁刑 または 30万円以下の罰金 | 大気汚染防止法 第34条第3号 |
| 計画変更命令・作業基準適合命令に違反(18条の18・18条の21) | 6月以下の拘禁刑 または 50万円以下の罰金 | 大気汚染防止法 第33条の2第1項第2号 |
※ 大気汚染防止法の罰則の条(33条〜37条)には、事前調査(18条の15第1項)をしなかったこと自体や、調査の記録の保存(同条第3項)を対象とする規定はありません。石綿障害予防規則の事前調査(3条)を怠ると、労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます。最新の条文はe-Gov 大気汚染防止法でご確認ください。
重要なのは両罰規定(大気汚染防止法36条)の存在です。実際に違反した個人だけでなく、法人にも罰金刑が科されます。発注者である建物所有者も、届出が必要な工事では届出の義務者です(18条の17第1項)。「業者任せ」は通用しません。発注前に有資格者の在籍確認・許認可確認を行うことが、リスク管理のうえで大切です。罰則の詳細事例はアスベスト事前調査義務違反の罰則ガイドもご参照ください。
2026年1月の工作物対応とは何ですか?
2026年1月1日以降に着工する工事から、反応槽・ボイラー・配管設備・焼却設備・貯蔵設備・煙突などの特定の工作物の事前調査は、一定の要件を満たす者(資格者)が行う必要があります(厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト)。建築物(2023年10月から)に続き、工作物にも資格者の要件が広がりました。
工作物の資格者の要件は、産業設備・インフラ設備の解体・改修工事にも影響します。厚生労働省・環境省の周知資料(令和7年6月23日)の別添1では、対象の工作物と調査できる者を次のように整理しています:
- 工作物石綿事前調査者が調査:反応槽、加熱炉、ボイラー及び圧力容器、配管設備(建築物に設ける給水・排水・換気・暖房・冷房・排煙設備などの建築設備を除く)、焼却設備、貯蔵設備(穀物を貯蔵する設備を除く)、発電設備(太陽光・風力を除く)、変電設備、配電設備、送電設備(ケーブルを含む)
- 工作物石綿事前調査者のほか、一般・特定建築物石綿含有建材調査者なども調査できる:煙突(建築物に設ける排煙設備などの建築設備を除く)、トンネルの天井板、プラットホームの上家、遮音壁、軽量盛土保護パネル、鉄道の駅の地下式構造部分の壁及び天井板、観光用エレベーターの昇降路の囲い(建築物であるものを除く)
- 上記以外の工作物:塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業に限って、有資格者による事前調査が必要
これらは、石綿等が使用されているおそれが高いものとして告示で定められた工作物です(周知資料(PDF)・2026年10月11日確認)。工作物の調査に対応できる業者かどうかは、依頼の前に確かめてください。詳細は工作物アスベスト調査の2026年1月義務化ガイドもご参照ください。
よくある質問
Q. 2023年10月の改正で何が一番変わりましたか?
A. 建築物の解体・改修工事の事前調査を、建築物石綿含有建材調査者などの資格者が行うことが必要になりました(石綿障害予防規則3条4項。厚生労働省の通達で施行は令和5年10月1日)。事前調査そのものは以前から義務で、調査結果の報告(石綿事前調査結果報告システム)は2022年4月1日から始まっています。
Q. 電子報告はどの工事が対象ですか?
A. 建築物の解体工事は解体部分の床面積の合計80㎡以上、建築物の改修工事は請負代金100万円(税込)以上、特定の工作物の解体・改修工事は請負代金100万円(税込)以上、総トン数20トン以上の鋼製の船舶の解体・改修工事が対象です(石綿障害予防規則4条の2・大気汚染防止法施行規則16条の11)。船舶の報告は石綿障害予防規則に基づくもので、報告先は労働基準監督署です。アスベスト含有の有無にかかわらず報告が必要です。
Q. 違反した場合の罰則は?
A. 大気汚染防止法では、事前調査結果の報告をしない・偽った場合は30万円以下の罰金(35条4号)、届出が必要な工事で届出をしない・偽った場合は3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(34条1号)、作業基準適合命令などに違反した場合は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(33条の2)です。事前調査をしなかったこと自体を対象とする罰則は大気汚染防止法にはありませんが、石綿障害予防規則の事前調査を怠ると労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます。両罰規定により法人にも罰金刑が科されます(大気汚染防止法36条)。
Q. 2026年1月の工作物対応とは何ですか?
A. 厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトによると、工作物の事前調査を一定の要件を満たす者が行う必要があるのは2026年(令和8年)1月からです。対象は、反応槽・加熱炉・ボイラー・圧力容器・配管設備・焼却設備・貯蔵設備・発電設備・煙突などの、石綿が使われているおそれが高い工作物として告示で定められたものです(建築物に設ける配管・排煙設備などの建築設備は除きます)。反応槽から送電設備までは工作物石綿事前調査者、煙突・遮音壁などは工作物石綿事前調査者のほか一般・特定建築物石綿含有建材調査者なども調査できます(厚生労働省・環境省の周知資料)。それ以外の工作物でも、塗料などの除去等の作業に係る事前調査には資格者が必要です(石綿障害予防規則3条4項ただし書)。
まとめ
アスベストの事前調査は規模に関係なく義務で、改正大気汚染防止法の施行(2021年4月)、調査結果の報告の開始(2022年4月)、建築物の調査を資格者が行う要件(2023年10月)と段階的に強化されてきました。2026年1月からは特定の工作物の調査も資格者が行う必要があります。建物所有者・施工業者ともに、罰則回避と健康被害防止の観点から、有資格者在籍業者の確実な選定と早期発注の準備が不可欠です。
関連記事
- アスベスト事前調査の有資格者義務化(2023年10月〜)完全ガイド
- アスベスト事前調査義務違反の罰則ガイド
- アスベスト工事の届出完全ガイド|書類・提出先・14日前ルール
- 石綿作業主任者と関連資格の役割