アスベスト法改正の変遷まとめ(2020〜2026年)|毎年変わる義務化ロードマップを完全整理
公開日:2026-05-27 最終更新:2026-10-11
本記事は法改正の概要を整理した参考情報です。 法令の正文・施行規則の詳細は環境省・厚生労働省・国土交通省の公式発表をご確認ください。具体的な工事・調査については必ず有資格者にご相談ください。2026年10月11日時点で e-Gov 法令検索の条文を確かめた情報です。
アスベスト規制は2020年6月の大気汚染防止法改正を起点に、2021年4月(改正法・改正省令の施行)、2022年4月(事前調査結果の報告)、2023年10月(建築物の調査者・分析調査者の要件)、2026年1月(工作物の調査者の要件)と段階的に強化されています。
「最近アスベスト調査の話をよく聞くが何が変わったのか」「以前は問題なかった工事が今は法令違反になるのか」——こうした疑問に対し、2020年から2026年までの法改正の流れを年次別に整理します。建物所有者・施工会社・管理会社・解体業者のいずれの立場でも必要な知識です。

アスベスト規制強化の背景:なぜ毎年変わるのか
石綿を0.1重量%を超えて含む製品の製造・使用等は2006年9月に禁止されましたが、それまでに建てられた建物には石綿含有建材が残っています。こうした建物の解体・改修で石綿が飛び散ったり作業者が吸い込んだりしないよう、事前調査・届出・報告・作業基準の規制が段階的に強められてきました。
規制強化の主な背景:
- 吹付け石綿は1955年頃から使われ、1971〜72年が最需要期。2004年10月に石綿含有建材の製造・使用等が禁止されるまで、建材に石綿が使われていた(環境省「石綿に関する基礎知識」)
- 既存の建物の解体・改修では、事前調査で石綿の有無を確かめないと、飛散やばく露を防ぐ対策が決められない
- 中皮腫は石綿ばく露から20〜50年の長い潜伏期間の後に発症するとされている(同資料)
2020年:大気汚染防止法の大幅改正(転換点)

2020年6月5日に改正大気汚染防止法(令和2年法律第39号)が公布されました。事前調査とその記録・報告、作業基準などの仕組みが改められ、一部を除き2021年4月1日から、事前調査結果の報告(18条の15第6項)は2022年4月1日から施行されました(段階施行)。
2020年改正の主なポイント:
- 事前調査:元請業者などが、解体等工事の前に石綿の使用の有無を調べる(大気汚染防止法18条の15)
- 調査結果の報告:一定規模以上の工事は、調査結果を都道府県知事等に報告する(同条6項・2022年4月から)
- 罰則:報告をしない・虚偽の報告は30万円以下の罰金(35条4号。この改正で追加)
※ 施行日は改正法の附則で「政令で定める日」とされ、2021年4月1日・2022年4月1日と定められました(環境省・厚生労働省の通達)。建築物の調査者の要件(2023年10月1日)は、石綿障害予防規則など省令の改正によるものです。
2021年4月:改正法と石綿障害予防規則の施行
2021年4月1日から、改正大気汚染防止法の大部分と、改正された石綿障害予防規則(石綿則)が施行されました。事前調査は、設計図書等の文書の確認と目視による確認の両方で、すべての材料について行うことになりました(石綿則3条2項)。
この時期の主なポイント(条文は2026年10月11日時点の e-Gov で確認):
- 事前調査の方法:設計図書等の文書の確認と目視による確認(石綿則3条2項)。2006年9月1日以降に着工した建築物などは、着工日を文書で確かめる方法でよい(同条3項3号)
- 分析かみなしか:書面と目視で分からない材料は分析調査を行うか、含有ありとみなして措置をとる(同条5項)
- 記録の保存:事前調査の記録を、調査終了日から3年間保存(同条7項)
- 発注者の責務:発注者は、請負人に石綿等の使用状況等を通知するよう努め、事前調査等が適切に行われるよう配慮しなければならない(石綿則8条。通知は努力義務)
- 事前調査の記録:調査終了日から3年間保存(石綿則3条7項)
- 作業の記録・石綿健康診断個人票:当該労働者が当該事業場で常時当該作業に従事しないこととなった日から40年間保存(石綿則35条・41条)
発注者(建物所有者など)にも、石綿の使用状況を請負人に伝える努力義務と、事前調査が適切に行われるよう配慮する責務が定められています(石綿則8条)。
2022年4月:事前調査結果の報告の開始
2022年4月1日以降に着手する工事から、一定規模以上の解体・改修工事では、事前調査の結果を報告する必要があります。報告は元請業者などが行い、石綿障害予防規則(4条の2)と大気汚染防止法(18条の15第6項)の両方で求められています。
報告が必要な主な工事:
- 建築物の解体:解体部分の床面積の合計が80㎡以上
- 建築物の改修:請負代金の額が100万円以上
- 工作物の解体・改修:厚生労働大臣が定める工作物で、請負代金の額が100万円以上
- 船舶の解体・改修:総トン数20トン以上の鋼製の船舶(石綿障害予防規則4条の2第1項4号)。船舶は石綿障害予防規則だけの報告で、報告先は労働基準監督署
- 報告の方法:電子システム(石綿事前調査結果報告システム)から報告すると、建築物・工作物の工事では労働基準監督署と自治体の両方に届く
- 罰則:大気汚染防止法の報告をしない・虚偽の報告は30万円以下の罰金(35条4号)。石綿障害予防規則の報告義務への違反は、労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます
報告の詳しい線引きはアスベスト事前調査が不要なケースは?で解説しています。
2023年10月:建築物の調査者・分析調査者の要件(最重要)
2023年10月1日以降に着手する工事から、建築物の事前調査は厚生労働大臣が定める者に、分析調査は分析調査者などに行わせる必要があります(石綿障害予防規則3条4項・6項)。調査結果の報告は2022年4月からで、この時の変更ではありません。
| 改正点 | 内容 | 根拠・罰則 |
|---|---|---|
| 建築物の事前調査を行う者 | 特定・一般の建築物石綿含有建材調査者は、すべての建築物を調べられる。一戸建て等石綿含有建材調査者が調べられるのは、一戸建て住宅と共同住宅の住戸の内部だけ | 石綿障害予防規則3条4項。違反は労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます |
| 分析調査を行う者 | 分析調査者などが行う | 石綿障害予防規則3条6項。違反は労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます |
| 2006年9月1日以降の着工 | 着工日を設計図書等で確かめる方法なら、資格者の要件はかからない | 石綿障害予防規則3条3項3号・4項 |
調査を頼むときは、担当者がどの区分の調査者か(特定・一般・一戸建て等)を、講習の修了証明書で確かめてください。
2024年以降:報告と資格で確かめること

2022年4月からの報告と2023年10月からの資格者の要件が、いまの工事の基本になっています。工事を頼む側は、報告が済んでいるかと、調査した人の資格を確かめてください。
- 報告の対象工事(解体80㎡以上・改修100万円以上など)なら、着工前に報告が済んでいるか
- 調査した人の区分(特定・一般・一戸建て等)と、講習の修了証明書
- 分析した場合は、分析調査者などが分析したか
- 吹付け石綿や石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材の除去などがある場合、作業開始の14日前までの届出(大気汚染防止法18条の17)
解体等の作業を行う現場には、調査終了日と調査結果の概要を見やすい箇所に掲示することが求められています(石綿障害予防規則3条8項)。着工前に、掲示の内容も業者に確かめておくと安心です。
2026年1月:工作物の事前調査者の要件
2026年1月1日から、石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣が定める工作物の事前調査も、厚生労働大臣が定める者に行わせる必要があります(石綿障害予防規則3条4項・令和5年厚生労働省令第2号)。
2026年1月からの要件の概要:
- 対象工作物:石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣が定める工作物(告示で定められているので、工事の前に該当するか確かめる)
- それ以外の工作物:塗料その他の石綿等が使用されているおそれがある材料の除去等の作業に係る事前調査は、資格者の要件がかかる(3条4項ただし書)
- 対象工事:工作物の解体・改修工事
- 報告:対象の工作物で請負代金の額が100万円以上の解体・改修工事は、事前調査結果の報告が必要(石綿障害予防規則4条の2第1項3号)
工場・発電所・ごみ処理施設などの設備を所有・運営する企業・自治体は、工作物部分の解体・改修工事で、調査を行う人が要件を満たすかを事前に確かめてください。
今後の改正の確かめ方
法令は改正されることがあります。このページでは、施行が決まっている改正だけを条文と通達に沿って載せ、予測や検討中の話は載せていません。
最新の情報を確かめる方法:
- 条文:e-Gov 法令検索で大気汚染防止法・同施行規則・石綿障害予防規則の現行の条文を見る
- 通達・解説:厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイト、環境省のアスベスト関連のページ
- 自治体:届出・報告の窓口や、補助金の募集要項は建物のある自治体の公式サイト
「今は問題ないが近いうちに解体したい」という方は、現行制度の理解と合わせて、自治体補助金制度の毎年の更新情報にも注目してください。
年次別法改正早見表(2020〜2026年)
2020年から2026年までのアスベスト関連法改正を一覧で整理します。
| 施行年月 | 改正法令 | 主な変更点 |
|---|---|---|
| 2020年6月(公布) | 大気汚染防止法(令和2年法律第39号) | 事前調査・報告・作業基準などの改正。報告違反の罰則(35条4号・30万円以下の罰金)を追加 |
| 2021年4月 | 大気汚染防止法・石綿障害予防規則 | 事前調査の方法(書面と目視)・記録の3年保存・発注者の責務(通知は努力義務) |
| 2022年4月 | 大気汚染防止法・石綿障害予防規則 | 事前調査結果の報告(解体80㎡以上・改修100万円以上など) |
| 2023年10月 | 石綿障害予防規則など | 建築物の事前調査は調査者(特定・一般・一戸建て等)、分析調査は分析調査者などが行う |
| 2026年1月 | 石綿障害予防規則(令和5年厚生労働省令第2号) | 厚生労働大臣が定める工作物の事前調査も、厚生労働大臣が定める者が行う |
※ 正確な施行規則・告示の詳細は環境省・厚生労働省・国土交通省の公式発表をご確認ください。
よくある質問
Q1. 2023年10月のアスベスト法改正で何が変わりましたか?
A. 2023年10月1日以降に着手する工事から、建築物の事前調査は厚生労働大臣が定める者(特定・一般・一戸建て等の建築物石綿含有建材調査者など)に、分析調査は分析調査者などに行わせる必要があります(石綿障害予防規則3条4項・6項)。調査結果の報告が始まったのは2022年4月で、2023年10月の変更ではありません。
Q2. 2026年1月の法改正で何が変わりましたか?
A. 2026年1月1日から、石綿等が使用されているおそれが高いものとして厚生労働大臣が定める工作物の事前調査も、厚生労働大臣が定める者に行わせる必要があります(石綿障害予防規則3条4項・令和5年厚生労働省令第2号)。対象の工作物は告示で定められているので、工事の前に確かめてください。
Q3. この先もアスベストの規制は変わりますか?
A. 法令は改正されることがあります。このページでは、施行が決まっている改正だけを条文と通達に沿って載せています。工事の前には、e-Gov 法令検索の最新の条文と、厚生労働省・環境省の公表資料を確かめてください。
まとめ
アスベスト規制は2020年6月の大気汚染防止法改正を転換点として、2021年4月・2022年4月・2023年10月・2026年1月と段階的に強化されてきました。2022年4月から一定規模以上の工事で事前調査結果の報告が必要になり、2023年10月からは建築物の事前調査を調査者が、分析を分析調査者が行う必要があります。2026年1月からは、厚生労働大臣が定める工作物の事前調査にも資格者の要件がかかります。法令は改正されることがあるため、工事の前には最新の条文と公的機関の資料を確かめてください。
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