アスベスト法改正の変遷まとめ(2020〜2026年)|毎年変わる義務化ロードマップを完全整理
公開日:2026-05-27 最終更新:2026-05-27 監修体制:建築物石綿含有建材調査者・石綿作業主任者の有資格者ネットワーク
本記事は法改正の概要を整理した参考情報です。 法令の正文・施行規則の詳細は環境省・厚生労働省・国土交通省の公式発表をご確認ください。具体的な工事・調査については必ず有資格者にご相談ください。2026年5月時点の情報です。
アスベスト規制は2020年の大防法大幅改正を起点に、2021年・2022年・2023年10月・2026年1月と段階的に強化されています。2023年10月の有資格者義務化が最も重要な変更点で、これ以降は無資格者による事前調査が法令違反となりました。2026年1月には工作物への対象拡大が実施されています。
「最近アスベスト調査の話をよく聞くが何が変わったのか」「以前は問題なかった工事が今は法令違反になるのか」——こうした疑問に対し、2020年から2026年までの法改正の流れを年次別に整理します。建物所有者・施工会社・管理会社・解体業者のいずれの立場でも必要な知識です。
アスベスト規制強化の背景:なぜ毎年変わるのか
2006年のアスベスト全面禁止から約20年が経過した現在、1970〜1980年代に大量使用されたアスベスト含有建材の老朽化が進み、解体・改修工事の急増が見込まれています。国土交通省は2028年前後に解体件数のピークを予測しており、不適切な工事による飛散事故を防ぐための規制強化が続いています。
規制強化の主な背景:
- 2006年のアスベスト全面禁止から20年が経過し、該当建材の解体時期が集中
- 国土交通省の推計で2028年前後に年間解体件数がピーク(約14万棟超)
- 過去の違反事例(不適切な除去による近隣飛散事故)への反省
- 有資格者の絶対数不足:2023年10月時点で全国数万人規模の調査者が必要
- 石綿健康被害救済法の給付件数が毎年増加(潜伏期間を経た新たな発症者)
2020年:大気汚染防止法の大幅改正(転換点)
2020年6月に大気汚染防止法が大幅改正されました。従来は一部の規制対象工事のみに届出義務があったものが、全ての解体・改修工事での事前調査義務化へと転換する基盤が作られました(段階施行)。
2020年改正の主なポイント(大気汚染防止法改正・2021年4月施行分を含む):
- 事前調査の実施義務の拡大:解体・改修工事全体への義務対象拡大の準備
- 調査結果の記録・保存義務:調査結果を3年間保存する義務の明確化
- 行政への報告義務の整備:延べ80㎡以上の解体工事への報告義務化への道筋
- 罰則の強化:届出義務違反・調査不実施への罰則強化
※ 2020年改正の一部規定は2021年4月1日施行、有資格者義務化は2023年10月1日施行と段階的に実施されました。
2021年:石綿障害予防規則の改正
2021年4月に石綿障害予防規則(石綿則)が改正され、建設業における事前調査の記録・保存義務と、調査結果に基づく作業計画の精緻化が義務付けられました。
2021年改正の主なポイント(石綿障害予防規則・労働安全衛生法関連):
- 事前調査結果の記録様式の整備・工事終了日から3年間の保存義務の明確化(石綿障害予防規則第3条・大気汚染防止法)
- 石綿作業主任者の職務範囲の明確化(作業前・作業中・完了時の確認義務)
- 特別教育(石綿取扱作業従事者)の内容更新・義務化範囲の確認
- 発注者への情報提供義務の強化:建物所有者が事前調査結果を工事発注時に提供することが義務化
- 事前調査結果の記録:工事終了日から3年間保存(石綿則第3条・大気汚染防止法)
- 石綿作業の作業記録・石綿健康診断個人票:当該労働者が常時従事しなくなった日から40年間保存(石綿則第35条・第41条)
この改正により「建物所有者が事前調査結果を把握・提供する義務」が明確になりました。解体業者だけでなく建物所有者もアスベスト対応の主体として位置づけられた重要な改正です。
2022年:建築物石綿含有建材調査者制度の創設
2022年1月に建築物石綿含有建材調査者(特定/一般)の国家認定制度が創設されました。この資格が2023年10月以降の事前調査義務化の「実施者要件」として位置づけられる中核制度です。
建築物石綿含有建材調査者制度の概要:
- 特定建築物石綿含有建材調査者:全ての建築物(住宅・非住宅)の調査が可能。建設業の有資格者や建築士等の上位者向け
- 一般建築物石綿含有建材調査者:住宅(延べ面積600㎡未満・地上階数3未満の非住宅除く)の調査が可能
- 登録講習機関での講習受講・修了考査合格が要件
- 資格更新制度あり(有効期限の管理が必要)
この資格制度の創設により「有資格者とは誰か」が法令上明確化されました。2023年10月の義務化まで約2年間の移行期間として資格取得が推進されました。
2023年10月:事前調査の有資格者義務化(最重要)
2023年10月1日は、アスベスト規制強化の最も重要な施行日です。大気汚染防止法・石綿障害予防規則の改正が同時施行され、建築物の解体・改修工事における事前調査が「建築物石綿含有建材調査者」のみが実施できる制度に移行しました。
| 改正点 | 内容 | 罰則 |
|---|---|---|
| 事前調査の有資格者限定 | 調査者は建築物石綿含有建材調査者(特定または一般)に限定 | 30万円以下の罰金(大防法違反) |
| 電子報告義務の開始 | 延べ80㎡以上の解体工事は調査結果を電子報告システムで報告 | 30万円以下の罰金 |
| 調査結果の発注者提供義務 | 建物所有者が解体業者に調査結果を書面で提供 | 行政指導・改善命令 |
この改正以前(2023年9月以前)は建築士・環境調査士等でも調査実施が認められていましたが、2023年10月以降は建築物石綿含有建材調査者の資格を持つ者のみに限定されました。「以前に調査した業者に頼んでいる」という方は、担当者の資格更新・有効期限をご確認ください。
2024年:制度定着・電子報告の本格稼働
2024年は2023年10月施行の制度定着・運用調整の年でした。電子報告システムの普及に伴い、行政側の監視体制が強化され、届出内容の正確性への要求も高まっています。
- 環境省の石綿事前調査結果報告システムの本格稼働・全国展開
- 有資格者の登録制度・資格更新管理の本格運用
- 違反案件への行政指導・立入検査件数の増加傾向
- 建物所有者への情報提供制度の周知徹底
実務上では「届出が受理されても内容に不備があれば改善指導」のケースが増えており、調査報告書・届出書の品質への要求が高まっています。有資格者への依頼と、届出代行を含む一括サービスの活用が推奨されます。
2026年1月:工作物事前調査者義務化
2026年1月1日、大気汚染防止法の改正施行により、建築物に加えて工作物(煙突・配管・ボイラー・焼却炉・反応槽等)のアスベスト事前調査も「工作物石綿事前調査者」(有資格者)が実施することが義務化されました。
工作物石綿事前調査者制度の概要(2026年1月施行):
- 対象工作物:煙突・配管(一定規模以上)・ボイラー・冷凍機・焼却炉・反応槽・貯蔵タンク等
- 対象工事:工作物の解体・改修工事
- 資格要件:工作物石綿事前調査者(登録講習機関での講習受講・考査合格)
- 建築物との違い:工作物は建築基準法上の建築物に含まれない構造物。従来の建築物石綿含有建材調査者では対応不可
工場・発電所・ごみ処理施設・給水施設等を所有・運営する企業・自治体にとって、2026年1月以降は工作物部分の解体・改修工事でも新たな対応が必要です。工作物に関する工事計画がある場合は、工作物石綿事前調査者(有資格者)への調査依頼を事前に手配してください。
2028年解体ピークに向けた今後の動向
国土交通省は2028年前後に年間解体件数がピークを迎えると予測しています。有資格者不足・電子報告の完全義務化拡大・資格更新制度の整備が今後の主要課題です。
今後の注目ポイント(2026年5月時点の政府発表・審議会資料より):
- 有資格者の供給不足対策:調査者養成講習の拡充・資格者データベースの整備
- 電子報告の対象拡大:現在は延べ80㎡以上の解体工事が対象だが、より小規模な工事への拡大も検討
- 資格更新制度の整備:建築物石綿含有建材調査者の資格有効期限・更新要件の明確化
- 2028年以降の解体需要ピーク対応:解体件数増加に対応した届出・監視体制の強化
「今は問題ないが近いうちに解体したい」という方は、現行制度の理解と合わせて、自治体補助金制度の毎年の更新情報にも注目してください。
年次別法改正早見表(2020〜2026年)
2020年から2026年までのアスベスト関連法改正を一覧で整理します。
| 施行年月 | 改正法令 | 主な変更点 |
|---|---|---|
| 2021年4月 | 大気汚染防止法・石綿障害予防規則 | 事前調査義務の拡大・記録保存義務・発注者への情報提供義務 |
| 2022年1月 | 大気汚染防止法施行規則 | 建築物石綿含有建材調査者制度の創設(特定・一般) |
| 2023年10月 | 大気汚染防止法・石綿障害予防規則 | 有資格者のみが事前調査を実施できる義務化・電子報告義務開始 |
| 2024年 | 制度運用整備 | 電子報告システム全国展開・有資格者登録管理の本格運用 |
| 2026年1月 | 大気汚染防止法 | 工作物(煙突・配管等)のアスベスト事前調査義務化(工作物石綿事前調査者) |
※ 正確な施行規則・告示の詳細は環境省・厚生労働省・国土交通省の公式発表をご確認ください。
よくある質問
Q1. 2023年10月のアスベスト法改正で何が変わりましたか?
A. 2023年10月1日施行の大気汚染防止法改正により、建築物の解体・改修工事における事前調査が建築物石綿含有建材調査者(有資格者)のみが実施できる制度に変わりました。あわせて延べ80㎡以上の解体工事では調査結果の電子報告義務も始まりました。無資格者による調査は法令違反となります。
Q2. 2026年1月の法改正で何が変わりましたか?
A. 2026年1月1日施行の改正により、建築物に加えて工作物(煙突・配管・ボイラー・焼却炉等)のアスベスト事前調査も工作物石綿事前調査者(有資格者)が実施することが義務化されました。工場・プラント・発電所等の工作物を対象とした工事では新たな対応が必要です。
Q3. 2028年以降にアスベスト規制でさらなる変化はありますか?
A. 国土交通省は2028年前後に建物解体件数がピークを迎えると予測しており、有資格者不足が課題となっています。現行の調査者制度(建築物石綿含有建材調査者)の資格更新制度の整備や、電子申告の完全義務化拡大が検討されています。最新情報は環境省・国土交通省の公式発表をご確認ください。
まとめ
アスベスト規制は2020年の大防法大幅改正を転換点として、2021年・2022年・2023年10月・2026年1月と段階的に強化されてきました。2023年10月の「事前調査の有資格者義務化」が最大の変化点であり、これ以降は建築物石綿含有建材調査者以外による調査が法令違反となります。2026年1月からは工作物にも対象が拡大されています。2028年解体ピークに向けてさらなる制度整備が予想されるため、建物所有者・施工会社・解体業者は最新の法令情報を継続的にフォローすることが重要です。
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