アスベスト事前調査の罰則一覧|違反事例と防止策
公開日:2026-05-19 最終更新:2026-10-11
※ 本記事に記載の費用相場・補助金額・統計・登録者数・法令等の数値は、記事の作成・更新時点の情報です。法令改正や制度改定により変わるため、最新の情報は各自治体公式サイト(.lg.jp)・厚生労働省・国土交通省・環境省の公表値を必ずご確認ください。
大気汚染防止法では、事前調査の結果の報告をしない・偽ると30万円以下の罰金(35条4号)、届出が必要な工事で届出をしない・偽ると3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(34条1号)、作業基準適合命令などの命令に違反すると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(33条の2)です。石綿障害予防規則の事前調査を怠ると、労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます。両罰規定により法人も対象です。
事前調査は以前から義務で、2023年10月からは建築物の事前調査を資格者(建築物石綿含有建材調査者など)が行うことも必要になりました。本記事では、罰則の体系・違反のパターン・両罰規定を、e-Gov 法令検索で確かめた条文に基づいて整理します(2026年10月11日確認)。

事前調査関連の罰則体系はどうなっていますか?
大気汚染防止法・労働安全衛生法(石綿障害予防規則はこの法律に基づく省令)・廃棄物処理法・建設リサイクル法に、それぞれ罰則があります。1つの工事で複数の法律の義務がかかるため、違反の内容ごとに確認が必要です。
罰則体系の概要:
| 法律 | 違反内容 | 罰則 |
|---|---|---|
| 大気汚染防止法 | 事前調査結果の報告をしない・虚偽の報告(18条の15第6項) | 30万円以下の罰金(35条4号) |
| 大気汚染防止法 | 特定粉じん排出等作業の届出をしない・虚偽の届出(18条の17第1項) | 3月以下の拘禁刑 / 30万円以下の罰金(34条1号) |
| 大気汚染防止法 | 届出対象工事で除去等の方法(18条の19)に違反 | 3月以下の拘禁刑 / 30万円以下の罰金(34条3号) |
| 大気汚染防止法 | 計画変更命令・作業基準適合命令に違反(18条の18・18条の21) | 6月以下の拘禁刑 / 50万円以下の罰金(33条の2第1項2号) |
| 石綿障害予防規則 | 事前調査(3条1項)・記録の3年保存(3条7項)を怠る | 労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます |
| 労働安全衛生法 | 石綿作業主任者未選任(14条) | 6月以下の拘禁刑 / 50万円以下の罰金(119条1号) |
| 労働安全衛生法 | 特別教育未実施(59条3項) | 6月以下の拘禁刑 / 50万円以下の罰金(119条1号) |
| 廃棄物処理法 | 不法投棄(16条) | 5年以下の拘禁刑 / 1,000万円以下の罰金(併科あり・25条1項14号) |
| 建設リサイクル法 | 対象建設工事の届出をしない・虚偽の届出(10条1項) | 20万円以下の罰金(51条1号) |
大気汚染防止法の罰則の条(33条〜37条)には、事前調査(18条の15第1項)をしなかったこと自体を対象とする規定はありません。罰則の対象は、報告・届出・除去等の方法・命令違反です。
具体的な違反事例にはどんなものがありますか?

無資格者による事前調査・調査未実施での着工・結果報告漏れ・記録未保存などが代表的な違反のパターンです。
代表的な違反パターン:
- パターン1:無資格者調査 - 建築物石綿含有建材調査者の資格なしで事前調査を実施
- パターン2:調査未実施 - 事前調査を全く行わずに解体工事を開始
- パターン3:結果報告漏れ - 80㎡以上の解体で電子報告を未実施
- パターン4:記録未保存 - 調査記録の3年保存義務を怠る
- パターン5:結果改ざん - アスベスト含有を「なし」と虚偽報告
- パターン6:みなし含有逃れ - 不明部材を調査せず除去対象から外す
- パターン7:根拠のない「なし」判定 - 石綿の有無が明らかにならないのに、分析調査も「含有とみなす」扱いもせずに「なし」と判定(石綿障害予防規則3条5項)
両罰規定とは何ですか?
法人の代表者・代理人・使用人等が違反した場合、行為者本人だけでなく法人も罰金刑の対象となる規定です。
両罰規定の適用範囲:
- 大気汚染防止法第36条(両罰規定)
- 労働安全衛生法第122条(両罰規定)
- 廃棄物処理法第32条(両罰規定。不法投棄などは法人に3億円以下の罰金)
- 建設リサイクル法第52条(両罰規定)
両罰規定により、現場担当者の違反であっても、行為者とあわせて法人が罰金刑を科される可能性があります。「現場が勝手にやった」では責任を逃れられません。
発注者にも責任はありますか?
はい、発注者(建物所有者)にも義務があります。事前調査結果の報告は元請業者の義務ですが、吹付け石綿などの除去工事の届出(大気汚染防止法18条の17)は発注者の義務で、届出をしないと罰則の対象です。
発注者の主な責任:
- 届出対象工事(吹付け石綿・石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材の除去等)の作業開始14日前までの届出(大気汚染防止法18条の17第1項)
- 元請業者が行う事前調査の費用を適正に負担するなどして調査に協力すること(同法18条の15第2項)
- 施工方法・工期・工事費などで作業基準の遵守を妨げるおそれのある条件を付けないよう配慮すること(同法18条の16・石綿障害予防規則9条)
- 請負人に建物の石綿の使用状況などを通知するよう努めること(石綿障害予防規則8条1項)
事前調査結果の報告(電子報告)は元請業者が行い(石綿障害予防規則4条の2・大気汚染防止法18条の15第6項)、調査の記録の作成と3年間の保存も調査をした事業者の義務です(石綿障害予防規則3条7項)。
「業者に任せたから知らなかった」では責任を逃れられない可能性があります。業者選定時には有資格者・許可番号の確認が発注者保護にもつながります。
行政処分にはどんなものがありますか?

大気汚染防止法の命令のほか、建設業者には建設業法の指示・営業停止・許可の取消しがあります。公共工事では、発注機関が指名停止とすることもあります。罰金だけでなく、事業を続けることへの影響も大きくなります。
行政処分の種類(条文は e-Gov で確認):
| 処分 | 根拠 | 内容 |
|---|---|---|
| 作業基準適合命令・作業の一時停止命令 | 大気汚染防止法18条の21 | 都道府県知事が命じる。従わないと6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(33条の2) |
| 指示 | 建設業法28条1項 | 業務に関しほかの法令に違反し、建設業者として不適当と認められるときなど |
| 営業停止 | 建設業法28条3項 | 1年以内の期間を定めて、営業の全部または一部の停止 |
| 許可の取消し | 建設業法29条 | 許可の基準を満たさなくなったときなど |
| 許可を受けられない期間 | 建設業法8条 | 不正の手段による許可の取得などで許可を取り消された場合や、拘禁刑以上の刑を受けた場合などは、5年を経過するまで許可を受けられない |
| 指名停止 | 発注機関ごとの基準 | 期間や要件は発注機関によって異なる |
公開された摘発事例は?
個別の摘発事例は、各都道府県・労働局などの発表で公表されることがあります。本記事では件数や増減の傾向を確かめていないため、数字は載せていません。
違反が見つかるきっかけになりうるもの:
- 都道府県知事による報告の求めや解体等工事の現場への立入検査(大気汚染防止法26条1項)、労働基準監督官による事業場への立入り・書類の検査(労働安全衛生法91条1項)
- 現場の掲示(調査結果の掲示は石綿障害予防規則3条8項・大気汚染防止法18条の15第5項の義務)と工事の内容の食い違い
- 電子システムでの事前調査結果の報告の有無
- 近隣住民などからの通報
違反を防ぐにはどうすればいいですか?
有資格業者の選定、書類の徹底管理、業者との適切なコミュニケーションが基本です。極端な安値発注を避けることも違反防止につながります。
違反防止のチェックリスト:
- 建築物石綿含有建材調査者の資格保有業者を選定
- 建設業許可・産廃許可の確認
- 適正費用での発注(相見積もりで内訳を比べる)
- 事前調査報告書・分析結果書の受領
- 届出が必要な工事なら、作業開始14日前までに届出が済んでいるかの確認(届出は発注者の義務・大気汚染防止法18条の17)
- マニフェストの写しで、廃棄物の最終処分まで終わったかの確認(マニフェストの交付と写しの5年保存は、排出事業者である元請業者の義務・廃棄物処理法12条の3、同法施行規則8条の21の2・8条の26)
- 工事完了報告書の受領
- 業者の保険加入確認(賠償責任保険)
よくある質問
Q1. 罰則の対象は施工業者だけですか?
A. いいえ。大気汚染防止法18条の17の届出(吹付け石綿・石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材の除去等の工事)は発注者または自主施工者の義務なので、届出をしない・偽った発注者は3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(34条1号)。また、法人の業務として違反があった場合は、行為者のほか法人も罰金刑の対象になります(大気汚染防止法36条・労働安全衛生法122条・廃棄物処理法32条)。
Q2. 過失でも罰せられますか?
A. 刑法38条1項により、罪を犯す意思がない行為は、法律に特別の規定がある場合を除いて罰せられません。ただし同条3項により、法律を知らなかったとしても、罪を犯す意思がなかったとすることはできません。「規制を知らなかった」は言い訳になりません。
Q3. 行政処分の影響はどのくらいですか?
A. 大気汚染防止法では、都道府県知事が作業基準に従うことや作業の一時停止を命じることができ(18条の21)、その命令に違反すると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(33条の2)。罰金だけでなく工事の停止・やり直しによる工期・費用への影響も大きくなります。
まとめ
アスベスト事前調査関連の罰則は、複数の法律にまたがり両罰規定で法人も対象となります。罰金に加えて、建設業法の営業停止・許可の取消しや、公共工事の指名停止が事業に与える影響も大きくなります。違反防止の最良策は、信頼できる有資格業者を選び、書類管理を徹底することです。