アスベスト廃棄物の処分とマニフェスト|特別管理産業廃棄物の処理ルール
公開日:2026-05-20 最終更新:2026-10-11
※ 本記事に記載の費用相場・補助金額・統計・登録者数・法令等の数値は、記事の作成・更新時点の情報です。法令改正や制度改定により変わるため、最新の情報は各自治体公式サイト(.lg.jp)・厚生労働省・国土交通省・環境省の公表値を必ずご確認ください。
アスベスト廃棄物の不法投棄は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科が科される重大犯罪です。マニフェスト写しの開示が可能な業者選定が信頼性の証となります。法令の最新情報は環境省 廃棄物処理法関連情報でご確認ください。
アスベスト廃棄物は飛散性(特別管理産業廃棄物)と非飛散性(産業廃棄物)で処理ルールが異なります。マニフェスト交付・5年間保管・許可業者運搬・適正処分は全て廃棄物処理法で義務付けられており、違反には重い罰則があります。
アスベスト除去工事の最後の工程である廃棄物処分は、最も法令違反が発覚しやすく、最も健康被害を起こしやすい段階です。本記事では、廃棄物の区分・マニフェスト管理・運搬・処分の各段階のルールを整理します。

アスベスト廃棄物はどのように分類されますか?
飛散性アスベスト廃棄物(吹付け材・保温材等)は特別管理産業廃棄物、非飛散性アスベスト廃棄物(成形板・スレート等)は産業廃棄物に分類されます。区分により処分施設・梱包・運搬要件が異なります。
| 区分 | 該当建材 | レベル | 処分の方法 |
|---|---|---|---|
| 特別管理産業廃棄物(廃石綿等・飛散性) | 除去した吹付けアスベスト・保温材・断熱材・耐火被覆材、除去作業で使ったシート・マスクなど | L1・L2 | 溶融など環境大臣が定める方法、または固型化等と二重こん包をして最終処分場に埋立 |
| 産業廃棄物(石綿含有産業廃棄物・非飛散性) | 成形板・スレート・床タイル・ケイカル板など(石綿を0.1%を超えて含むもの) | L3 | 溶融など環境大臣が定める方法、または最終処分場に分散しないように埋立 |
特別管理産業廃棄物は廃棄物処理法上、最も厳格な管理が要求される区分です。特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を置く義務もあります(廃棄物処理法12条の2第8項)。解体・除去工事の廃棄物では、排出事業者は元請業者です(同法21条の3第1項)。
マニフェストとは何ですか?

産業廃棄物管理票(マニフェスト)は、廃棄物の種類・数量・運搬・処分ルートを追跡する法定書類です。紙マニフェスト(一般には7枚つづりの複写式)または電子マニフェストの2方式があり、廃棄物処理法で交付・保管が義務付けられています。
マニフェストの主な役割:
- 排出事業者が廃棄物処分の責任を最後まで追跡できる
- 運搬業者・処分業者の業務記録を残す
- 不法投棄・不適正処分の防止
- 行政の処理実態把握に活用
紙マニフェスト7票の役割:
| 票 | 役割 | 保管者 |
|---|---|---|
| A票 | 排出事業者控(交付時) | 排出事業者 |
| B1票 | 運搬業者控 | 運搬業者 |
| B2票 | 排出事業者へ運搬終了報告 | 排出事業者 |
| C1票 | 処分業者控 | 処分業者 |
| C2票 | 運搬業者へ処分終了報告 | 運搬業者 |
| D票 | 排出事業者へ処分終了報告 | 排出事業者 |
| E票 | 排出事業者へ最終処分終了報告 | 排出事業者 |
マニフェスト交付の流れは?
排出事業者(解体工事の元請)が運搬業者にマニフェストを交付し、運搬・処分の各段階で必要な票が回付・返送されます。電子マニフェストでは公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWNET)が運用しています。
- 排出事業者がマニフェスト交付:廃棄物を引き渡すときに、A票を控えとして残し、B1〜E票を運搬業者に渡します(廃棄物処理法12条の3第1項)。
- 運搬業者が運搬:B1票を控えとして残し、C1〜E票を廃棄物と一緒に処分業者へ回します(同条3項後段)。
- 運搬終了報告:運搬業者は、運搬を終えた日から10日以内にB2票を排出事業者に送付します(施行規則8条の23)。
- 処分業者が処分:処分を終えた日から10日以内に、D票を排出事業者に、C2票を運搬業者に送付します(同条4項・施行規則8条の25)。
- 最終処分終了報告:最終処分が終わったことの報告を受けた処分業者は、10日以内にE票を排出事業者に送付します(同条5項・施行規則8条の25の3)。
- 届かないときの確認:交付から90日(特別管理産業廃棄物は60日)以内にB2票・D票が、180日以内にE票が届かないときは、排出事業者は処理の状況を確かめて必要な措置を講じ、その期間が過ぎた日から30日以内に都道府県知事に報告します(同条8項・施行規則8条の28・8条の29)。
- 5年間保管:排出事業者・運搬業者・処分業者は、手元に残る票をそれぞれ5年間保存します(同条2項・6項・9項・10項、施行規則8条の21の2・8条の26・8条の30・8条の30の2)。
※ 紙マニフェストの票の分け方(A〜E票・7枚つづり)は一般的な様式によるものです(一宮市「マニフェスト(産業廃棄物管理票)制度」)。期限は廃棄物処理法施行規則の条文で2026年10月11日に確認しました。
アスベスト廃棄物の梱包・運搬ルールは?
廃石綿等(吹付け材・保温材など)は飛散しないように梱包し(環境省のマニュアルでは二重こん包)、袋や容器ごとに廃石綿等である旨と取り扱いの注意を表示します。成形板などの石綿含有産業廃棄物は、破砕しないようにしてほかの廃棄物と分けて運びます。運搬は都道府県別の許可業者が行います(廃石綿等は特別管理産業廃棄物収集運搬業、成形板などの石綿含有産業廃棄物は産業廃棄物収集運搬業の許可)。
梱包要件:
- 廃石綿等:飛散しないように梱包する(保管するときも同じ。廃棄物処理法施行規則8条の13)。環境省のマニュアルでは二重こん包
- 廃石綿等の表示:袋や容器ごとに「廃石綿等」である旨と取り扱う際の注意を表示する(環境省マニュアル3.4)
- 石綿含有産業廃棄物(成形板など):破砕しないようにし、ほかの廃棄物と混ざらないよう分ける(施行令6条1項1号ロ)。容器への表示の義務はないが、表示することが望ましいとされています(同マニュアル3.4)
運搬要件:
- 積み降ろしをする区域の都道府県知事(政令市は市長)の許可を持つ業者(廃石綿等は特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可)
- マニフェストの交付を受けて運ぶ(交付がない廃棄物は受け取れない。法12条の4第2項)
- 運搬車の車体の外側に産業廃棄物を運ぶ車である旨などを表示し、決められた書面を車に備える(施行令6条1項1号イ)
- 飛散・流出・悪臭が漏れないようにする
- 積替え・保管をするときは、施行令の基準に従う
※ 環境省マニュアル:石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)(令和3年3月)
処分施設はどのような種類がありますか?

石綿の廃棄物は、環境大臣が定める方法(溶融など)で処分するか、産業廃棄物の最終処分場の一定の場所に分散しないように埋め立てます。どの施設が受け入れるかは、施設の許可の内容によって異なります。
| 処分方法 | 対象 | 法令で決められていること |
|---|---|---|
| 溶融などの処分 | 廃石綿等・石綿含有産業廃棄物 | 環境大臣が定める方法で行う(施行令6条1項2号・6条の5第1項2号ト)。溶融施設は1,500℃以上で溶融できるものであること(施行規則12条の2第14項) |
| 埋立処分(廃石綿等) | 廃石綿等 | あらかじめ固型化・薬剤による安定化などをしたうえで、耐水性の材料で二重にこん包し、産業廃棄物の最終処分場の一定の場所に、分散しないように埋め立て、表面を土砂で覆う(施行令6条の5第1項3号ワ) |
| 埋立処分(石綿含有産業廃棄物) | 成形板など | 産業廃棄物の最終処分場の一定の場所に、分散しないように埋め立て、表面を土砂で覆う(施行令6条1項3号) |
処分施設の所在地により運搬距離・運搬費が大きく変動します。条文は廃棄物処理法施行令(2026年10月11日確認)。
処分費用の相場はいくらですか?
処分費用は、廃棄物の区分(廃石綿等か石綿含有産業廃棄物か)、量、処分の方法、処分施設の所在・運搬距離で大きく変わります。公的な相場の統計は無いため、見積書で区分ごとの単価と量を確かめてください。
| 処分対象 | 費用が変わる主な要因 | 見積書で確かめること |
|---|---|---|
| 飛散性アスベスト廃棄物(廃石綿等・特別管理産業廃棄物) | 量・梱包の方法・処分の方法(埋立か溶融などか) | 区分・数量・単価、処分先の許可 |
| 非飛散性アスベスト廃棄物(石綿含有産業廃棄物) | 量・材質による産業廃棄物の種類・処分先 | 区分・数量・単価、処分先の許可 |
| 運搬費(収集運搬業者) | 運搬距離・車両の大きさ・回数 | 台数・回数、収集運搬業の許可 |
※ 実費は処分施設・地域により大きく変わるため、現地調査のうえ見積書で確かめてください。
違反するとどのような罰則がありますか?
不法投棄は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科(法人は3億円以下)、無許可業者への委託は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科(法人も1,000万円以下)、マニフェスト未交付・虚偽記載・保存しないことは1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。
| 違反内容 | 罰則(個人) | 法人重課 |
|---|---|---|
| 不法投棄(25条1項14号) | 5年以下の拘禁刑 or 1,000万円以下の罰金(併科あり) | 3億円以下の罰金(32条1項1号) |
| 無許可業者への委託(25条1項6号) | 5年以下の拘禁刑 or 1,000万円以下の罰金(併科あり) | 1,000万円以下の罰金(32条1項2号・各本条の罰金) |
| マニフェスト未交付・虚偽記載(27条の2) | 1年以下の拘禁刑 or 100万円以下の罰金 | 100万円以下の罰金 |
| マニフェスト(写し)を保存しない(27条の2) | 1年以下の拘禁刑 or 100万円以下の罰金 | 100万円以下の罰金 |
| 特別管理産業廃棄物管理責任者未設置(30条5号) | 30万円以下の罰金 | 30万円以下の罰金 |
アスベスト廃棄物関連の違反は健康被害リスクが大きいため、社会的影響も加味して厳しく取り締まられます。
業者選定でマニフェストの何を確認すべき?
産業廃棄物収集運搬業許可番号(都道府県別)の確認、マニフェスト写しの開示可否、過去のマニフェスト管理実績、特別管理産業廃棄物の対応可否を必ず確認してください。
業者選定時のチェックリスト:
- 産業廃棄物収集運搬業許可番号(都道府県別・自社運搬の場合)
- 処分業者の許可番号・処分施設の所在
- マニフェスト写しの工事完了後開示可否
- 過去の特別管理産業廃棄物の取扱実績
- 電子マニフェスト(JWNET)の利用可否
- 処分終了報告(D票・E票)の確実な返送実績
- 不適正処分・不法投棄の業務停止・行政処分歴の有無
マニフェストの確認はアスベスト解体業者の選び方|失敗しない7つのチェックポイントでも詳しく解説しています。
よくある質問
Q1. 飛散性と非飛散性の違いは?
A. 飛散性アスベスト廃棄物(吹付け材・保温材等を除去したもの)は「廃石綿等」として特別管理産業廃棄物に区分され、最も厳格な管理が必要です。非飛散性(成形板・スレート等)は「石綿含有産業廃棄物」として産業廃棄物の扱いですが、破砕しないようにほかの廃棄物と分けて運ぶことと、マニフェストの交付は必要です。
Q2. マニフェストはいつまで保管しますか?
A. 廃棄物処理法に基づき、排出事業者・運搬業者・処分業者は、手元に残る管理票やその写しを5年間保存する義務があります(交付・送付した票はその日から、送付を受けた票は受けた日から)。管理票やその写しを保存しないと、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます(廃棄物処理法27条の2)。
Q3. 不法投棄するとどうなりますか?
A. 廃棄物処理法上、不法投棄は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科(法人は3億円以下の罰金)が科される重大犯罪です(25条1項14号・32条1項1号)。アスベスト含有廃棄物の不法投棄は健康被害を引き起こす可能性があり、社会的影響も大きいため厳しく取り締まられます。
まとめ
アスベスト廃棄物の処分は廃棄物処理法で厳格に規定され、飛散性は特別管理産業廃棄物、非飛散性は産業廃棄物として処理されます。マニフェスト交付・5年間保管・許可業者運搬・適正処分は全て法令義務であり、違反には重い罰則があります。業者選定時には許可番号とマニフェスト開示の透明性を必ず確認し、処分の最後まで責任ある業者を選びましょう。