アスベスト レベル1(吹付け)除去費用と工事の流れ|費用の考え方と隔離工法を解説
公開日:2026-05-20 最終更新:2026-10-11
本記事は費用の考え方を整理したもので、金額を保証するものではありません。実際の費用は建物構造・施工箇所・延べ面積・廃棄物量により大きく変動します。正式金額は必ず有資格者による現地調査後の見積書をご確認ください。法令・条文の最新情報は環境省 大気汚染防止法 石綿関連等の公的機関でご確認ください。
吹付けアスベスト(レベル1)の除去は、必要な措置が多く費用がかさみやすい工事です。このサイトで確認できた公的な目安は、国土交通省が公表したアスベスト含有吹付け材の除去単価(2007年の施工実績・処理面積300㎡以下で1㎡あたり2.0万〜8.5万円など)です。隔離・集じん排気・湿潤化など、石綿障害予防規則と大気汚染防止法で定められた作業基準への対応の費用が含まれます。
国土交通省は、レベル1〜3を発じんの度合いによる便宜的な分類とし、レベル1を「もっとも飛散性の高いアスベスト含有吹付け材」としています(国土交通省「アスベスト対策Q&A」)。本記事では、費用相場の内訳・変動要因・工事の流れ・他レベルとの違いを、関連法令と公的データに基づいて整理します。

レベル1(吹付け)アスベストとは何ですか?
建物の鉄骨・天井・壁などに吹き付けられたアスベスト含有材です。レベル1〜3の中で最も飛散性が高い区分で、除去では作業場所の隔離・集じん排気・前室などの設置・負圧の保持が必要です(石綿障害予防規則6条)。
「レベル1〜3」は法令の用語ではなく、国土交通省は発じんの度合いによる便宜的な分類としています。使われていることがある場所の例:
- 鉄骨造ビルの梁・柱の耐火被覆
- 機械室・電気室の天井裏(吸音・断熱用途)
- ボイラー室・煙突周辺の断熱施工
- 立体駐車場・工場の天井吹付け
- 体育館・劇場の音響調整用吹付け材
保温・断熱の目的で石綿を吹き付ける作業は、昭和50年(1975年)に原則禁止されました(厚生労働省「アスベスト(石綿)に関するQ&A」)。それより後の建物でも石綿を含む材料が使われている場合があるため、築年数だけで判断せず、事前調査で確かめます。
レベル1の除去費用相場はいくらですか?

公的な目安は、国土交通省が公表したアスベスト含有吹付け材の除去単価です。2007年の施工実績をもとにしたもので、処理面積300㎡以下は1㎡あたり2.0万〜8.5万円と幅が大きく、面積・建物構造・養生難易度・廃棄物量などで同じ面積でも数倍の差が出ることがあります。
国土交通省は2008年4月、社団法人建築業協会が集計した吹付けアスベストの除去費用(2007年1月〜12月の施工実績195件)を公表し、現在も「アスベスト対策Q&A」に「アスベスト含有吹付け材の除去費用」の目安として載せています。
| アスベスト処理面積 | 除去費用(1㎡あたり) |
|---|---|
| 300㎡以下 | 2.0万〜8.5万円 |
| 300㎡〜1,000㎡ | 1.5万〜4.5万円 |
| 1,000㎡以上 | 1.0万〜3.0万円 |
※ 出典:国土交通省「アスベスト対策Q&A」q40(「2007年1月から2007年12月における、施工実績データより算出された除去単価」)。施工実績データから処理件数の上下15%を除いた範囲で、施工条件によってはこの幅を大きく上回ったり下回ったりすることがあります。部屋の形状・天井の高さ・固定機器の有無などで処理費に大きな幅が出ること、処理面積300㎡以下では幅が非常に大きいことも同ページに注記されています。2008年以降の人件費・処分費の変化は含みません。
実際の見積もりは単純な「面積×単価」では決まりません。主に次の項目で構成されます:
| 費用項目 | 金額が変わる主な要因 |
|---|---|
| 除去本体工事 | 面積・建材の厚さ・接着の強さ |
| 事前調査・分析 | 建材点数・検体数・定性分析か定量分析か |
| 隔離養生・前室設置 | 面積・階層・複雑さ |
| 負圧除じん装置 | 台数・工期 |
| 廃石綿等(特別管理産業廃棄物)の運搬・処分 | 量・運搬距離・処分施設 |
| 大気濃度測定・完了報告 | 測定の有無と回数(自治体の条例・指導や発注者の求めによる) |
※ 項目ごとの金額について、国などが公表した相場の統計は見当たりません。実費は必ず現地調査後の正式見積書をご確認ください。
なぜレベル1は高額なのですか?
吹付け石綿の除去では、隔離・集じん排気・前室の設置・負圧の保持・特別教育を受けた作業員・特別管理産業廃棄物としての処分などが法令で求められ、その分の費用がかかります(石綿障害予防規則6条・27条、廃棄物処理法)。
費用がかかる主な要因は次の通りです:
- 隔離と前室など:作業区域を他の場所から隔離し、出入口に前室・洗身室・更衣室をこの順に通るよう設けます(石綿障害予防規則6条2項)
- 集じん・排気装置:HEPAフィルタ付きの集じん・排気装置で排気し、作業区域と前室を負圧に保ちます。初めて除去する日や装置を動かしたときなどに、排気口からの漏れを確かめます(同6条2項、大気汚染防止法施行規則 別表第七)
- 呼吸用保護具と作業衣:隔離した場所での吹付け石綿の除去では、電動ファン付き呼吸用保護具またはこれと同等以上の性能のものを使います(石綿障害予防規則14条)
- 湿潤化:建材を湿らせて粉じんの飛散を抑えます(同13条)
- 特別管理産業廃棄物処分:除去した吹付け石綿は廃石綿等(特別管理産業廃棄物)として、通常の産業廃棄物より厳しい基準で梱包・運搬・処分します
- 除去完了の確認:隔離を解く前に、除去した部分を湿潤化し、石綿の知識を有する者が除去の完了を確認します(石綿障害予防規則6条3項)。大気濃度測定は全国一律の法定義務ではありませんが、自治体の条例・指導で求められる場合があります
費用が変動する要因は何ですか?

建物構造(鉄骨/RC)、施工面積、天井高、養生範囲、廃棄物量、現場への出入りのしやすさなどで費用は大きく変わります。国土交通省も、部屋の形状・天井の高さ・固定機器の有無などの施工条件で処理費に大きな幅が出ると注記しています。
主な変動要因の影響を整理します:
| 変動要因 | 費用への影響 |
|---|---|
| 施工面積(㎡) | 国土交通省の目安でも、処理面積が大きいほど1㎡あたりの単価は低い |
| 天井高・足場必要性 | 高所作業は仮設足場の費用が追加されることがある |
| 養生の難易度 | 複雑形状・配管多数は養生工数増 |
| 建物使用継続/解体 | 使いながらの工事は、隔離の範囲や工程の分け方が増えることがある |
| 廃棄物処分施設の所在 | 運搬距離で運搬費が変わる |
レベル1除去工事の流れはどうなりますか?
事前調査→分析→行政届出(届出対象の作業は開始14日前まで)→隔離→集じん・排気装置の設置→湿潤化・除去→清掃・除去完了の確認→廃棄物処分→結果の報告という流れです。期間は規模と条件で変わります。
- 事前調査:建築物石綿含有建材調査者などが書面と目視で調べます(2023年10月1日以降に着工する工事は資格者が行う。石綿障害予防規則3条4項)。
- 分析調査:分からない材料は、分析調査者が JIS A 1481 などの方法で分析します。分析せずに石綿を含むものとみなすこともできます(同3条5項・6項)。
- 作業計画・行政届出:作業計画を作り(同4条)、発注者(自主施工者)が作業開始の14日前までに都道府県知事(政令で定める市では市長)へ届け出ます(大気汚染防止法18条の17)。
- 隔離:作業区域を他の場所から隔離し、前室・洗身室・更衣室をこの順に通るよう設けます(石綿障害予防規則6条2項)。
- 負圧管理:HEPAフィルタ付きの集じん・排気装置を設け、作業区域と前室を負圧に保ちます。
- 湿潤化・除去:建材を湿らせて除去します(同13条)。
- 清掃・除去完了の確認:HEPA掃除機で清掃し、隔離を解く前に除去した部分を湿潤化して、石綿の知識を有する者が除去の完了を確認します(石綿障害予防規則6条3項)。大気濃度測定は全国一律の法定義務ではありませんが、自治体の条例・指導で求められる場合があります。
- 廃棄物処分:廃石綿等(特別管理産業廃棄物)として扱い、運搬・処分を委託するときはマニフェストを交付します(廃棄物処理法12条の3)。
- 結果の報告:元請業者が作業の結果を発注者に書面で報告し、作業の記録を作って保存します(大気汚染防止法18条の23)。
レベル2・レベル3との費用比較

レベル2・3では、隔離などが必要な作業の範囲がレベル1より狭くなり、その分の設備の負担は小さくなりやすいです。ただしこのサイトで確認できた国の目安は吹付け材の除去単価(2007年の施工実績)で、レベル2・3の相場を示す公的な統計は見当たりません。金額は現地調査後の正式見積書で確定します。
| レベル | 建材種別 | 費用が上がる要因 | 主要措置 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 吹付けアスベスト | 隔離・負圧管理・特別管理産業廃棄物としての処分が必要 | 隔離・集じん排気・負圧の保持・湿潤化・電動ファン付き呼吸用保護具など(石綿障害予防規則6条・13条・14条) |
| レベル2 | 保温材・断熱材・耐火被覆材 | 切断等を伴う除去ではレベル1と同様の措置が必要 | 切断等を伴う除去は隔離など(同6条1項2号)、切断等を伴わない除去は作業場所への立入禁止とその表示(同7条) |
| レベル3 | 成形板(スレート・Pタイル等) | 面積・足場・廃棄物量で変動。設備負担は比較的小さい | 切断・破砕せずにそのまま取り外す。難しいときは薬液などで湿らせる(大気汚染防止法施行規則 別表第七 四の項) |
レベル1が高くなりやすい理由は、隔離養生・負圧除じん装置という大規模設備が必要だからです。一方、レベル3は成形板(屋根スレート・床タイル等)で発じん性が低いため、養生レベルが緩和されます。
補助金は使えますか?
国の制度は、自治体が補助制度を設けた場合に国が自治体へ交付する仕組みです。補助の有無・金額・上限は自治体ごとに異なるため、該当自治体の最新情報をご確認ください。
国の交付金の対象は吹付けアスベスト等の除去等なので、レベル1は補助の対象になりうる工事です。主な補助制度:
- 国土交通省「住宅・建築物アスベスト改修事業」:社会資本整備総合交付金の一つで、吹付け建材の含有調査と、吹付けアスベスト等の除去・封じ込め・囲い込みなどが対象(社会資本整備総合交付金交付要綱 イ-16-(12)-②)。自治体の補助制度を通じて使うもので、補助額・上限は自治体ごとに異なる
- 都道府県・市区町村の補助制度:制度の有無・対象・上限額・申請窓口・申請の時期は自治体ごとに異なります
アスベスト解体補助金の全国制度ガイドもあわせてご参照ください。
業者選びで失敗しないポイントは?
建設業許可・廃棄物の運搬の許可・建築物石綿含有建材調査者・石綿作業主任者の在籍を確認し、書面見積書・施工計画書・マニフェスト写しの開示可否で判断します。
レベル1は技術と設備の両方が必要な工事のため、業者選びを誤ると健康被害・法令違反・追加費用につながりかねません。チェックポイント:
- 建設業許可番号と業種の確認(請負代金500万円以上の工事。業種は工事の内容による)
- 廃石綿等(特別管理産業廃棄物)の運搬・処分を委託するなら、委託先の許可(収集運搬は積卸しをする区域の都道府県知事の許可。廃棄物処理法14条の4)。元請業者が自ら運ぶ場合は許可は要りませんが、特別管理産業廃棄物処理基準に従います(同12条の2・21条の3)
- 建築物石綿含有建材調査者の在籍人数(特定・一般)
- 石綿作業主任者の在籍人数(石綿を取り扱う作業では選任が必要。石綿障害予防規則19条)
- 過去のレベル1施工実績件数(数字根拠付き)
- 自社施工率(再下請けに丸投げではないか)
- マニフェスト写しの開示可否
詳細はアスベスト解体業者の選び方|失敗しない7つのチェックポイントをご覧ください。
よくある質問
Q1. レベル1の除去費用が高い理由は?
A. 隔離・集じん排気・前室の設置・負圧の保持・呼吸用保護具・特別管理産業廃棄物としての処分など、石綿障害予防規則と大気汚染防止法で定められた作業基準への対応が必要なためです。レベル3の成形板に比べて、多くの手間と設備が必要です。
Q2. レベル1の届出はいつまでに必要ですか?
A. 大気汚染防止法18条の17第1項により、発注者(自主施工者)が作業開始の14日前までに都道府県知事(政令で定める市では市長)へ届け出ます。災害などで緊急に行う必要がある場合は、速やかに届け出ます(同条2項)。
Q3. 吹付けアスベストが見つかった場合、必ず除去が必要ですか?
A. 解体工事では、原則として事前に除去が必要です。改造・補修の工事では、建材の状態や作業内容に応じて封じ込め・囲い込みも選べます(大気汚染防止法18条の19)。建物を使い続ける場合は、封じ込め・囲い込みのあとも定期的に状態を点検し、将来の解体・改修時に除去を計画しておくと安心です。
まとめ
レベル1(吹付けアスベスト)の除去費用は、国土交通省が公表した吹付け材の目安(2007年の施工実績)で処理面積300㎡以下は1㎡あたり2.0万〜8.5万円、1,000㎡以上は1.0万〜3.0万円とされ、隔離養生・負圧除じん装置・特別管理産業廃棄物処分などの厳格な作業基準が費用を押し上げます。費用は建物条件で大きく変動するため、必ず有資格者による現地調査後の正式見積書を取得しましょう。補助金活用と複数業者比較で、健康と適正コストの両立を図ることが重要です。
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