石綿障害予防規則の完全解説|事業者の義務と罰則
公開日:2026-05-19 最終更新:2026-10-11
※ 本記事に記載の費用相場・補助金額・統計・登録者数・法令等の数値は、記事の作成・更新時点の情報です。法令改正や制度改定により変わるため、最新の情報は各自治体公式サイト(.lg.jp)・厚生労働省・国土交通省・環境省の公表値を必ずご確認ください。
石綿障害予防規則(石綿則)は、労働安全衛生法に基づきアスベストによる労働者の健康障害を予防するための厚生労働省令です。事前調査・作業計画・特別教育・健康診断など事業者の義務を定めています。
アスベスト関連の法律は複雑で、大気汚染防止法・労働安全衛生法・廃棄物処理法など複数の法令が関わります。その中でも「石綿障害予防規則」(通称:石綿則)は、労働者保護の観点から事業者に最も具体的な義務を課す省令です。本記事では、規則の構成・主な義務・罰則を条文ベースで詳しく解説します。

石綿障害予防規則とは何ですか?
労働安全衛生法に基づく厚生労働省令で、アスベストによる労働者の健康障害予防を目的とする規則です。2005年に制定され、2020年の改正分は2021年4月から段階的に施行されています(結果の報告は2022年4月、資格者による調査は2023年10月から)。
正式名称は「石綿障害予防規則」で、平成17年厚生労働省令第21号として制定されました。労働安全衛生法と同法施行令の規定に基づき、石綿等を取り扱う作業や建築物等の解体等の作業における具体的な事業者の義務を定めています。
規則は本則(第50条まで)と附則で構成され、対象物質の定義、事前調査、作業計画、保護具、特別教育、健康診断、記録保存など多岐にわたります。
事業者の主要な義務は何ですか?

事前調査・作業計画作成・石綿作業主任者選任・特別教育・健康診断・記録保存・呼吸用保護具の備え付けの7つが中心的な義務です。違反は労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます。
石綿則で事業者に課されている主要な義務を整理します:
| 条文 | 義務内容 |
|---|---|
| 第3条 | 事前調査の実施・結果の3年間保存 |
| 第4条 | 作業計画書の作成・労働者への周知 |
| 第4条の2 | 事前調査結果の報告(解体80㎡以上・改修100万円以上など。2022年4月から) |
| 第5条 | 作業届(吹付け石綿・石綿含有保温材等の除去などの作業。計画届を出す場合は不要) |
| 第19条 | 石綿作業主任者の選任 |
| 第27条 | 労働者特別教育の実施 |
| 第40条 | 特殊健康診断の実施(6月以内ごとに1回) |
| 第41条 | 健康診断個人票の40年間保存 |
| 第44条 | 呼吸用保護具の備え付け |
2023年10月の改正で何が変わりましたか?
建築物の事前調査を、建築物石綿含有建材調査者などの資格者が行うことが必要になりました。分析調査も、分析調査者などが行う必要があります。2020年の改正は、2023年10月だけでなく段階的に施行されています。
改正石綿則の施行の段階は以下の通りです(2021年4月〜2023年10月は厚生労働省 基発0804第8号、2026年1月は令和5年厚生労働省令第2号):
- 2021年4月1日:改正省令の施行(事前調査の方法・記録の保存などの規定の整備)
- 2022年4月1日:事前調査結果の報告(解体部分の床面積の合計80㎡以上の解体・請負代金100万円(税込)以上の改修など)
- 2023年10月1日:建築物の事前調査を資格者が行うこと、分析調査を分析調査者などが行うこと
- 2026年1月1日:告示で定める工作物の事前調査を一定の要件を満たす者が行うこと
作業計画書には何を記載しますか?
作業の方法と順序、石綿等の粉じんの発散を防止・抑制する方法、労働者へのばく露を防止する方法の3つを示します(第4条第2項)。関係労働者へ周知し、計画どおりに作業を行う義務があります。
石綿則第4条第2項に基づき、作業計画には以下を示す必要があり、定めたら関係労働者に周知します(同条第3項):
- 作業の方法および順序
- 石綿粉じんの発散を防止し、または抑制する方法
- 作業を行う労働者への粉じん曝露を防止する方法
また、作業計画に従って作業を行わせたことは、写真などで記録し、作業を終了した日から3年間保存します(第35条の2)。
特別教育の内容は何ですか?

石綿の有害性・粉じんの発散を抑える措置・保護具の使用方法など5科目の教育が必要です。石綿使用建築物等解体等作業に係る業務に就く労働者が対象です。
石綿則第27条と労働安全衛生法第59条第3項に基づく特別教育の科目は以下の通りです(時間数などの実施に必要な事項は、同条第2項により別に定められています):
| 科目(石綿則第27条第1項) |
|---|
| 石綿の有害性 |
| 石綿等の使用状況 |
| 石綿等の粉じんの発散を抑制するための措置 |
| 保護具の使用方法 |
| そのほか石綿等の粉じんのばく露の防止に関し必要な事項 |
罰則の構成はどうなっていますか?
石綿則は省令なので、違反したときの罰則は労働安全衛生法の罰則規定によります。どの条が当たるかは違反した義務によって異なります。法人も両罰規定(労働安全衛生法122条)で罰金刑の対象となります。
条文で確かめられる例は次の通りです。それ以外の義務の違反も、労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます:
- 石綿作業主任者の未選任(労働安全衛生法14条):6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(119条1号)
- 特別教育の未実施(労働安全衛生法59条3項):6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(119条1号)
- 建設工事計画届(労働安全衛生法88条3項)をしない:50万円以下の罰金(120条1号)
- 事前調査を怠る・記録を保存しない・健康診断をしない など:労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます
重大な労働者災害が発生した場合は、業務上過失致死傷罪などより重い刑事責任を問われる可能性もあります。
健康診断はどう運用しますか?
雇入れ・配置替えの際と、その後6月以内ごとに1回の特殊健康診断が必要です。過去にその業務に常時従事させたことのある労働者で現に使用している者にも、6月以内ごとに1回行います。健康診断個人票は40年間保存します。
石綿則第40条と第41条に基づく健康診断要件:
- 業務従事中:雇入れ・配置替えの際と、その後6月以内ごとに1回(第40条第1項)
- 過去に石綿等の製造・取扱いの業務に常時従事させたことのある労働者で、現に使用している者:6月以内ごとに1回(第40条第2項)
- 診断項目:業務の経歴の調査、石綿によるせき・たん・息切れ・胸痛等の既往歴の有無の検査、せき・たん・息切れ・胸痛等の症状の有無の検査、胸部のエックス線直接撮影による検査(第40条第1項)
- 異常の疑いがあり医師が必要と認める者:作業条件の調査など、追加の項目(第40条第3項)
- 記録保存:健康診断個人票を、常時その業務に従事しないこととなった日から40年間保存(第41条)
よくある質問
Q1. 石綿障害予防規則は誰に適用されますか?
A. 主に、労働者に石綿等を取り扱う作業や建築物等の解体・改修の作業などをさせる事業者に、労働者の健康障害を防ぐための義務を定めています。解体等の仕事の発注者にも、請負人への石綿の使用状況の通知(努力義務)や事前調査が適切に行われるようにする配慮が求められます(第8条)。
Q2. 事前調査の記録は何年保存しますか?
A. 事前調査の記録は3年間の保存が義務付けられています(石綿則第3条第7項)。保存しないなどの違反は、労働安全衛生法上の罰則の対象になりえます。
Q3. 健康診断は受けさせる義務がありますか?
A. はい、石綿等の取扱いなどの業務に常時従事する労働者には、雇入れ・配置替えの際と、その後6月以内ごとに1回の特殊健康診断が義務付けられています(石綿則第40条)。
まとめ
石綿障害予防規則は、アスベスト業務における事業者の義務を最も具体的に定めた省令です。違反は刑事罰の対象となるだけでなく、労働者の健康と命に直結します。アスベスト除去を依頼する際は、これらの法令を遵守する有資格業者を選ぶことが不可欠です。