マンション共用部のアスベスト除去|管理組合の義務・工事手順・費用分担ガイド
公開日:2026-05-25 最終更新:2026-05-25 監修体制:建築物石綿含有建材調査者・石綿作業主任者の有資格者ネットワーク
※ 本記事に記載の費用相場・補助金額・統計・登録者数・法令等の数値は、記事の作成・更新時点の情報です。法令改正や制度改定により変わるため、最新の情報は各自治体公式サイト(.lg.jp)・厚生労働省・国土交通省・環境省の公表値を必ずご確認ください。
本記事の費用・制度は業界相場・公的制度の目安です。実際の費用・補助上限・申請手順は建物規模・管理規約・自治体により異なります。法令・条文の最新情報は環境省 大気汚染防止法 石綿関連等の公的機関でご確認ください。
マンション共用部のアスベスト調査・改修は建物区分所有法および建築物の管理権限に基づき管理組合の義務です。長期修繕計画への組込・総会決議・区分所有者への事前説明が必要です。
1970年代〜1990年代に建てられた中規模・大規模マンションでは、共用部にアスベスト含有建材が使われている可能性があります。本記事では管理組合理事・組合員が知っておくべき法的義務、工事手順、費用負担の考え方、補助金制度を整理します。

マンション共用部のアスベスト調査は誰の義務ですか?
共用部の調査・維持管理義務は建物区分所有法に基づき管理組合に帰属します。改修・解体工事を行う際は、大気汚染防止法・石綿障害予防規則により有資格者による事前調査と労基署・自治体への結果報告が義務化されています。
管理組合が負う主な法的義務を整理します:
- 建物区分所有法:共用部分の管理・改修は管理組合の業務
- 大気汚染防止法:解体・改修工事における事前調査・行政届出義務
- 石綿障害予防規則:建築物石綿含有建材調査者による事前調査義務(2023年10月〜)
- 労働安全衛生法:作業員の安全確保・特別教育・健康診断
- 区分所有者・居住者への説明義務:管理規約・総会決議に基づく事前説明
理事会が「築年数が古いから不要」「費用がかかるから保留」と判断することは法令違反になり得ます。大規模修繕の計画段階で必ず調査計画を組み込みましょう。
どの部位に多く使われていますか?

共用廊下・階段室の天井吹付け、機械室・電気室の耐火被覆、エレベーター機械室の天井、ボイラー室の断熱材、地下駐車場の天井吹付け等にアスベストが使われている可能性が高い部位です。
| 使用部位 | 建材種別 | レベル |
|---|---|---|
| 機械室・電気室の天井・梁 | 吹付けアスベスト・耐火被覆材 | レベル1〜2 |
| 共用廊下・階段室の天井 | 吹付け材・けい酸カルシウム板 | レベル1〜3 |
| エレベーター機械室 | 耐火被覆材・断熱材 | レベル1〜2 |
| ボイラー室・配管 | 保温材・断熱材 | レベル2 |
| 地下駐車場の天井 | 吹付け材 | レベル1 |
| 共用部床・壁 | Pタイル・スレートボード | レベル3 |
特に機械室・電気室・地下駐車場の天井吹付けはレベル1(高発じん性)の可能性があり、除去費用も20,000円〜85,000円/㎡と高額になります。レベル別費用はアスベスト レベル1除去費用ガイドもあわせてご参照ください。
管理組合が取るべき手順は?
①理事会での議題化→②管理会社・専門業者への概算見積依頼→③長期修繕計画への組込→④総会決議→⑤有資格者による事前調査→⑥区分所有者への説明→⑦行政届出→⑧除去工事の順で進めます。
- 理事会での議題化:大規模修繕の検討開始時にアスベスト調査の必要性を議題化します。
- 概算見積取得:複数の建築物石綿含有建材調査者から事前調査の概算見積を取得します。
- 長期修繕計画への組込:5年以内に大規模修繕を予定している場合は、修繕計画に調査・除去費用を組み込みます。
- 総会決議:通常総会または臨時総会で調査・工事の実施を決議します(普通決議または特別決議は管理規約による)。
- 有資格者による事前調査:建築物石綿含有建材調査者が共用部の調査・試料採取・分析を実施します。
- 区分所有者への説明:調査結果と工事計画を文書・説明会で全区分所有者に通知します。
- 行政届出:含有が判明した場合、工事開始14日前までに大気汚染防止法・石綿障害予防規則の届出を提出します。
- 除去工事:レベルに応じた隔離養生・負圧管理を実施し、廃棄物はマニフェスト管理で処分します。
工事中の居住者対応はどうすればよいですか?

共用部工事では居住者の避難は通常不要ですが、工事区域近接住戸への事前通知・養生計画の説明・苦情窓口の設置が重要です。レベル1工事では負圧管理により外部飛散を防ぎます。
居住者対応の標準フロー:
- 工事1ヶ月前:全戸ポスティング・掲示板への工事概要通知(工期・対象部位・安全対策・苦情窓口)
- 工事2週間前:説明会開催(対面+書面)。質問対応・要配慮者(高齢者・乳幼児・呼吸器疾患者)の確認
- 工事直前:工事区域近接住戸へ詳細スケジュール通知・窓開閉指示
- 工事期間中:日々の作業内容・大気濃度測定結果の掲示・苦情即応窓口運営
- 工事完了後:完了報告書・大気濃度測定結果・マニフェスト写しの開示
レベル1工事の隔離養生・負圧管理についてはアスベスト飛散のリスクと隔離措置もあわせてご参照ください。
費用は管理費か修繕積立金か?
アスベスト除去は資産価値維持のための「特別の管理に属する事項」として修繕積立金から支出するのが原則です。緊急性が高く積立金が不足する場合は一時金徴収・借入を総会決議で実施します。
| 費用項目 | 支出元 | 備考 |
|---|---|---|
| 事前調査・分析 | 管理費 or 修繕積立金 | 金額が小さい場合は管理費から支出するケースあり |
| 除去本体工事 | 修繕積立金 | 大規模修繕の一部として支出 |
| 行政届出代行 | 修繕積立金 | 除去工事費の一部 |
| 居住者説明会費用 | 管理費 | 会場費・印刷費等 |
| 緊急工事の一時金 | 区分所有者からの一時金 | 総会特別決議が必要なケース多い |
※ 上記は標準的な考え方です。実際は管理規約の細則によります。
補助金は管理組合でも使えますか?
多くの自治体で管理組合も補助金対象に含まれます。国土交通省「住宅・建築物アスベスト改修事業」では含有調査・除去工事ともに補助があり、自治体独自の上乗せ制度を併用できる場合もあります。
管理組合が活用できる主な補助制度:
- 国の制度:住宅・建築物アスベスト改修事業(含有調査:最大25万円/棟、除去工事:総額の1/3以内)
- 都道府県・市区町村の制度:上限額・対象工事は自治体ごとに異なります。多くの政令市・中核市に管理組合対応の制度あり
- 申請主体:管理組合理事長が申請者となるケースが標準
- 申請タイミング:工事契約前の事前申請が必須の自治体が多い
補助金申請は「総会決議→補助金申請→交付決定→工事契約→工事完了→実績報告→補助金交付」の流れで、半年〜1年単位のスケジュールが必要です。詳細はアスベスト解体補助金の全国制度ガイドもあわせてご参照ください。
よくある質問
Q1. 共用部のアスベスト調査を区分所有者が拒否できますか?
A. 共用部の調査・改修は管理組合の総会決議に基づく業務執行であり、個別区分所有者が拒否することはできません。専有部内への調査員立入が必要な場合は事前に通知し協力依頼します。立入拒否があった場合は管理規約・区分所有法に基づき対応します。
Q2. 工事費用は修繕積立金で賄えますか?
A. 長期修繕計画に組み込まれていれば修繕積立金から支出可能です。計画外の緊急除去工事の場合は、総会決議により一時金徴収または借入(住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資等)を検討する必要があります。
Q3. 居住者は工事中に避難する必要がありますか?
A. 共用部の隔離養生・負圧管理で適切に飛散防止していれば、居住者の避難は通常不要です。ただし高齢者・乳幼児・呼吸器疾患のある方は念のため工事区域近接住戸での日中外出を推奨する場合があります。事前説明会で要配慮者を把握し個別対応します。
Q4. 賃貸住戸の所有者にも費用負担はありますか?
A. はい。共用部の修繕費用は持分割合に応じて全区分所有者が負担します。賃貸オーナーであっても専有部分の所有者として負担義務があり、賃借人に転嫁することは原則できません。詳細は管理規約と税理士にご確認ください。
まとめ
マンション共用部のアスベスト調査・除去は建物区分所有法に基づく管理組合の重要な業務です。築40年以上の中規模・大規模マンションでは機械室・地下駐車場・共用廊下にレベル1〜3のアスベストが使われている可能性があるため、大規模修繕計画と連動した計画的な対応が必要です。総会決議・区分所有者説明・行政届出・有資格者選定・補助金活用の各ステップを丁寧に進めることで、健康・法令遵守・資産価値の三つを守ることができます。
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