マンション共用部のアスベスト除去|管理組合の義務・工事手順・費用分担ガイド
公開日:2026-05-25 最終更新:2026-10-11
※ 本記事に記載の費用相場・補助金額・統計・登録者数・法令等の数値は、記事の作成・更新時点の情報です。法令改正や制度改定により変わるため、最新の情報は各自治体公式サイト(.lg.jp)・厚生労働省・国土交通省・環境省の公表値を必ずご確認ください。
本記事の費用・制度の説明は一般的な考え方です。実際の費用・補助上限・申請手順は建物規模・管理規約・自治体により異なります。法令・条文の最新情報は環境省 大気汚染防止法 石綿関連等の公的機関でご確認ください。
マンションの共用部分は区分所有者全員の共有で、その管理は区分所有者全員でつくる団体(管理組合)が集会(総会)の決議などで行います(区分所有法3条・11条・18条)。共用部の解体・改修工事では、管理組合が発注者となり、事前調査の費用負担や、届出が必要な工事の届出などを行います(大気汚染防止法18条の15第2項・18条の17)。
石綿含有建材の製造・使用等は2004年10月、石綿を0.1重量%を超えて含む製品全般は2006年9月に禁止されたため(環境省資料)、それより前に建てられたマンションでは、共用部にアスベスト含有建材が使われている可能性があります。本記事では管理組合理事・組合員が知っておくべき法令上の決まり、工事手順、費用負担の考え方、補助金制度を整理します(2026年10月11日に条文を確認)。

マンション共用部のアスベスト調査は誰の義務ですか?
事前調査そのものを行う義務があるのは、工事を請け負う元請業者です(大気汚染防止法18条の15第1項・石綿障害予防規則3条)。発注者である管理組合は、調査の費用を適正に負担するなどして調査に協力する義務があり(同法18条の15第2項)、届出が必要な除去工事では作業開始の14日前までの届出を行います(同法18条の17第1項)。
共用部の工事に関わる主な決まりを、誰の義務かで整理します:
- 区分所有法(管理組合・区分所有者):共用部分の管理は集会の決議で決め、形状や効用が著しく変わる変更はより多くの賛成が必要(17条・18条)。費用は規約に別段の定めがない限り持分に応じて負担(19条)
- 大気汚染防止法(発注者=管理組合):調査への協力・費用負担(18条の15第2項)、作業基準の遵守を妨げる条件を付けない配慮(18条の16第1項)、吹付け石綿や石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材の除去などの届出(18条の17第1項)
- 大気汚染防止法(元請業者):事前調査と、結果を書面で発注者に説明すること(18条の15第1項)、一定規模以上の工事の結果報告(同条第6項)、現場での掲示(同条第5項)、作業後の発注者への書面報告(18条の23)
- 石綿障害予防規則・労働安全衛生法(工事を行う事業者):資格者による事前調査(3条4項。建築物は2023年10月から)、作業計画(4条)、作業員の特別教育(27条)・石綿作業主任者の選任(19条)など
調査を行うのは業者ですが、大規模修繕などの計画段階で調査の費用と期間を見込んでおくと、工事直前の予定変更を避けやすくなります。
どの部位に多く使われていますか?

共用廊下・階段室の天井吹付け、機械室・電気室の耐火被覆、エレベーター機械室の天井、ボイラー室の保温材・断熱材、地下駐車場の天井吹付けなどは、アスベストが使われていることがある部位の例です。実際に使われているかは事前調査で確かめます。
| 使用部位 | 建材種別 | レベル |
|---|---|---|
| 機械室・電気室の天井・梁 | 吹付けアスベスト・耐火被覆材 | レベル1〜2 |
| 共用廊下・階段室の天井 | 吹付け材・けい酸カルシウム板 | レベル1〜3 |
| エレベーター機械室 | 耐火被覆材・断熱材 | レベル1〜2 |
| ボイラー室・配管 | 保温材・断熱材 | レベル2 |
| 地下駐車場の天井 | 吹付け材 | レベル1 |
| 共用部床・壁 | Pタイル・スレートボード | レベル3 |
特に機械室・電気室・地下駐車場の天井吹付けはレベル1(高発じん性)の可能性があり、除去費用も隔離・負圧管理などが必要なため高額になりやすくなります。レベル別費用はアスベスト レベル1除去費用ガイドもあわせてご参照ください。
管理組合が取るべき手順は?
①理事会での議題化→②業者への概算見積依頼→③長期修繕計画への組込→④総会決議→⑤資格者による事前調査→⑥区分所有者への説明→⑦届出・報告→⑧除去工事の順で進めるのが一つの例です。
- 理事会での議題化:大規模修繕の検討開始時にアスベスト調査の必要性を議題化します。
- 概算見積取得:建築物石綿含有建材調査者などの資格者がいる複数の業者から、事前調査の概算見積を取得します。
- 長期修繕計画への組込:大規模修繕の予定に合わせて、修繕計画に調査・除去費用を組み込みます。
- 総会決議:共用部分の管理は集会(総会)の決議で決めます。形状や効用が著しく変わる工事(共用部分の変更)は、より多くの賛成が必要な決議になります(区分所有法17条・18条)。どちらに当たるか、規約で定めた要件は、管理規約と管理会社などで確認してください。
- 資格者による事前調査:建築物石綿含有建材調査者などが書面と目視で調査し、明らかにならない材料は、分析調査者が分析するか、含有ありとみなします(石綿障害予防規則3条4項〜6項)。元請業者は結果を書面で管理組合に説明します(大気汚染防止法18条の15第1項)。
- 区分所有者への説明:調査結果と工事計画を文書・説明会で区分所有者・居住者に知らせます(法令で決まった方法ではなく、合意形成のための進め方です)。
- 届出・報告:吹付け石綿や石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材の除去などは、発注者(管理組合)が作業開始の14日前までに都道府県などへ届け出ます(大気汚染防止法18条の17第1項)。解体部分の床面積の合計80㎡以上の解体工事や請負代金100万円(税込)以上の改修工事などでは、含有の有無にかかわらず元請業者が調査結果を報告します(同法18条の15第6項・石綿障害予防規則4条の2)。
- 除去工事:建材と作業に応じた飛散防止措置(吹付け材の除去などでは隔離・負圧など)を行い、廃棄物はマニフェストで管理して処分します。
工事中の居住者対応はどうすればよいですか?

工事区域に近い住戸への事前通知・養生計画の説明・苦情窓口の設置が重要です。吹付け材(レベル1)の除去などでは、作業場所の隔離と負圧の保持で外部への飛散を防ぎます(石綿障害予防規則6条)。
居住者対応の進め方の例(日程は工事の内容に合わせて決めます):
- 工事の前:全戸ポスティング・掲示板への工事概要通知(工期・対象部位・安全対策・苦情窓口)
- 説明会:対面と書面で説明し、質問への対応と要配慮者(高齢者・乳幼児・呼吸器疾患のある方など)の確認
- 工事直前:工事区域に近い住戸へ詳細スケジュール通知・窓の開け閉めのお願い
- 工事期間中:元請業者は事前調査の結果などを現場の見やすい場所に掲示します(大気汚染防止法18条の15第5項)。日々の作業内容の掲示、測定を行う場合はその結果の掲示、苦情窓口の運営
- 工事完了後:元請業者から作業の結果の書面報告を受け(同法18条の23)、測定した場合の結果やマニフェストの写しとあわせて区分所有者に開示
レベル1工事の隔離養生・負圧管理についてはアスベスト飛散のリスクと隔離措置もあわせてご参照ください。
費用は管理費か修繕積立金か?
どの費用をどこから支出するかは、各マンションの管理規約によります。国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)28条では、修繕積立金は「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」「不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕」「敷地及び共用部分等の変更」などの「特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる」としています。積立金が足りない場合は、一時金の徴収や借入を総会で検討します。
| 費用項目 | 支出元 | 備考 |
|---|---|---|
| 事前調査・分析 | 管理費 or 修繕積立金 | 金額が小さい場合は管理費から支出するケースあり |
| 除去本体工事 | 修繕積立金 | 大規模修繕の一部として支出 |
| 届出書類の準備費 | 修繕積立金 | 除去工事費に含めて見積もられる場合がある |
| 居住者説明会費用 | 管理費 | 会場費・印刷費等 |
| 積立金が足りない場合の一時金 | 区分所有者からの一時金 | 決議の要件は管理規約で確認 |
※ 上記は一つの考え方の例です。実際は管理規約の定めによります。出典:国土交通省「令和7年マンション標準管理規約の見直し(各論)」(PDF・28条の現行の条文を掲載)
補助金は管理組合でも使えますか?
国の制度(住宅・建築物アスベスト改修事業)は、自治体が補助制度を設けた場合に国が自治体へ交付する仕組みです。補助の有無・金額・上限・管理組合が申請できるかは自治体ごとに異なるため、建物のある自治体の募集要項で確かめてください。
管理組合が補助制度を調べるときの確認点:
- 国の制度:住宅・建築物アスベスト改修事業(自治体を通じた交付金で、金額・上限は自治体ごとに異なる)
- 都道府県・市区町村の制度:対象となる建材・工事(含有調査・除去など)と上限額
- 申請者:管理組合(理事長)が申請できるか
- 申請の時期:工事の契約・着手より前に申請が必要か
一般的には「総会決議→補助金申請→交付決定→工事契約→工事完了→実績報告→補助金交付」のような流れになり、総会の日程も含めて期間に余裕を持って計画します。詳細はアスベスト解体補助金の全国制度ガイドもあわせてご参照ください。
よくある質問
Q1. 共用部のアスベスト調査を区分所有者が拒否できますか?
A. 共用部分の調査・工事は、集会(総会)の決議などに基づいて管理組合が進めます(区分所有法18条)。共用部分を保存・改良するため必要な範囲で、区分所有者は他の区分所有者の専有部分の使用を請求でき、相手に損害が出たときは償金を支払います(同法6条2項)。専有部分への立入りが必要な場合は事前に通知して協力をお願いし、応じてもらえないときは管理規約の定めを確かめ、必要に応じて弁護士などに相談してください。
Q2. 工事費用は修繕積立金で賄えますか?
A. 管理規約で修繕積立金の使い道として認められていれば、修繕積立金から支出できます(国土交通省のマンション標準管理規約では28条で使い道を定めています)。積立金が足りない場合は、総会の決議により一時金の徴収や借入(住宅金融支援機構の、管理組合が申し込む「マンション共用部分リフォーム融資」など。対象になる工事かは機構の案内で確認)を検討します。
Q3. 居住者は工事中に避難する必要がありますか?
A. 避難が必要かどうかは、作業の内容と飛散防止措置によります。吹付け材の除去などでは、作業場所の隔離と負圧の保持が原則として求められます(石綿障害予防規則6条)。工事前に業者から隔離の範囲・作業時間・作業中の注意点の説明を受け、高齢者・乳幼児・呼吸器疾患のある方などには個別に相談の機会を設けると安心です。
Q4. 賃貸住戸の所有者にも費用負担はありますか?
A. はい。共用部分の負担は、規約に別段の定めがない限り、各区分所有者が持分に応じて負担します(区分所有法19条)。住戸を賃貸に出している区分所有者も同じです。具体的な負担の割合は管理規約で確かめてください。
まとめ
マンション共用部の工事では、管理組合が発注者として、事前調査への協力・費用負担や、届出が必要な除去工事の届出を行います(大気汚染防止法18条の15第2項・18条の17)。2006年9月より前に建てられたマンションでは、機械室・地下駐車場・共用廊下などにレベル1〜3のアスベストが使われている可能性があるため、大規模修繕計画と連動した計画的な対応が大切です。総会決議(区分所有法17条・18条)・区分所有者への説明・届出・資格者のいる業者の選定・補助金の確認の各ステップを丁寧に進めることで、健康・法令遵守・資産価値を守ることにつながります。
関連記事
- アスベスト事前調査の有資格者義務化(2023年10月〜)完全ガイド
- アスベスト解体補助金の全国制度ガイド
- 石綿含有建材のレベル別一覧|L1〜L3の特徴と費用が決まる要因
- アスベスト除去見積書の読み方|項目別チェックポイント