個人宅のアスベスト除去 全プロセスガイド|調査・届出・工事・費用・補助金を一括解説
公開日:2026-05-27 最終更新:2026-10-11
【重要】アスベストは絶対に自己判断・自己除去しないでください。 自分で工事をする人も大気汚染防止法の事前調査・作業基準の義務を負い、吸入した場合は中皮腫(潜伏期間20〜50年)・肺がん(15〜40年)のリスクがあります(厚生労働省)。本記事の情報は参考提供を目的とするものであり、具体的な調査・工事は必ず建築物石綿含有建材調査者・石綿作業主任者の有資格者に依頼してください。最新の法令情報は環境省アスベスト対策、厚生労働省石綿総合情報ポータルでご確認ください。2026年10月時点の情報です。
個人宅のアスベスト除去は、事前調査→補助金申請→行政届出→除去工事→廃棄物処分の7ステップで進みます。有資格者による事前調査が法令上の起点となり、届出が必要な作業では作業開始14日前までの届出を正しく行うことが適法な工事の前提です。補助金を使う場合は、申請の時期を自治体の募集要項で先に確かめます。
「自宅を解体・リフォームしようとしたら業者にアスベスト調査が必要と言われた」「築40年の戸建てを売却・解体するために石綿調査を依頼したい」——こうした疑問を抱える個人の方向けに、2026年10月時点の法令に基づき、調査の依頼先・費用・補助金・工事の流れを一括解説します。

個人宅でアスベストが問題になるのはどんなとき?
解体・大規模改修・屋根葺き替え・内装リノベーションの際に問題になります。2006年9月1日より前に着工した建物では、スレート屋根・ビニル床タイル(Pタイル)などの成形板に石綿が含まれている可能性があり、有資格者による事前調査が必要です(石綿障害予防規則3条4項)。2006年9月1日以降の着工なら、着工日を書面で確かめる方法で調査できます(同条3項3号)。
特に注意が必要な状況(大気汚染防止法・石綿障害予防規則より):
- 解体工事:建物全体を壊す場合。解体部分の床面積の合計が80㎡以上なら結果の報告が必要
- 大規模改修:壁・天井・屋根の張り替え・断熱材の入れ替え
- リフォーム:築年数の古い建物の内装工事・設備更新
- 建て替え:解体前に旧建物のアスベスト調査が必要
- 相続した空き家の解体・売却:解体前の事前調査が前提
「見た目で判断できる」「少量だから問題ない」は誤りです。事前調査は設計図書などの書面と現地の目視で行い、それでも石綿の有無が分からない材料は、分析調査を行うか、含有ありとみなして措置をとります(石綿障害予防規則3条2項・5項)。自己判断で工事を進めると大気汚染防止法・廃棄物処理法違反となる可能性があります。
まずやること:建物の築年数と建材を確認する

解体・改修では築年数にかかわらず事前調査が必要で、2006年9月1日より前に着工した建物は書面と現地の目視で調べます。建築確認済証・設計図面・工事仕様書を用意しておくと調査がスムーズになります。図面がなくても調査は可能です(石綿障害予防規則3条2項1号ただし書)。
準備しておくと役立つ書類:
- 建築確認済証・建築確認申請書(着工年確認)
- 設計図書・仕様書(使用建材の確認)
- 増改築の履歴(増築部分の着工年も確認が必要)
- 過去のリフォーム記録(どこを改修したか)
これらが揃っていない場合も、有資格者が現地で目視による調査を行います。目視などでも石綿の有無が分からない材料は、分析せずに含有ありとみなして措置をとることもできます(みなし含有・同条5項ただし書)。
STEP1:有資格者による事前調査を依頼する
2023年10月以降、建築物のアスベスト事前調査は建築物石綿含有建材調査者などの資格者が実施しなければなりません(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)。一般・特定の調査者はすべての建築物を、一戸建て等の調査者は一戸建て住宅と共同住宅の住戸の内部を調べられます。2006年9月1日以降の着工を書面で確かめるだけで済む場合を除き、無資格者による調査は法令上認められません(石綿障害予防規則3条4項)。
依頼先の3つの選択肢
| 依頼先 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| アスベスト専門除去業者 | 調査から工事まで一括対応可能。有資格者在籍 | 調査後に除去工事まで依頼したい場合 |
| 環境調査・分析会社 | 調査・分析に特化。工事は別業者に発注 | 調査のみを第三者機関に任せたい場合 |
| 建築士事務所(有資格者在籍) | 設計図面と合わせて調査可能 | リノベーション・改修の設計と合わせたい場合 |
業者選定の必須確認事項
- 建築物石綿含有建材調査者(特定または一般)の資格証を持つ担当者が在籍しているか
- 工事の内容に合った業種の建設業許可を取得しているか(請負代金500万円以上の除去工事を依頼する場合。建物の解体を伴う工事は500万円未満でも解体工事業登録か関係する許可が必要)
- 運搬・処分を委託する場合は、委託先の産業廃棄物(廃石綿等は特別管理産業廃棄物)の収集運搬業・処分業の許可を確認できるか(元請業者が自ら運ぶ場合、収集運搬業の許可は不要)
- 工事保険・損害賠償保険に加入しているか
- 自社施工か下請け発注かを確認(下請けの場合、下請け業者の許可証も確認)
※ 許可・登録の有無は、許可証や登録の番号を業者に示してもらい、許可・登録をした都道府県などに確かめられます(解体工事業者登録簿は都道府県知事が一般の閲覧に供しています・建設リサイクル法)。
STEP2:調査結果の確認とレベル判定
事前調査の結果、石綿を含む(または含むとみなした)建材は、業界では発じん性に応じてレベル1〜3と呼び分けられます。法令は材料の種類(吹付け石綿・断熱材等・成形板など)と作業ごとに必要な措置を決めているため、調査結果でどの材料に石綿があるかを確認することが重要です。
| レベル | 代表的な建材 | 発じん性 | 主な工法 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 吹付けアスベスト・石綿を含む吹付けロックウール | 著しく高い | 隔離・負圧除じん・湿潤化による除去(石綿障害予防規則6条) |
| レベル2 | 保温材・断熱材・耐火被覆材 | 高い | 切断等を伴う除去は隔離・負圧除じん(6条)、それ以外も湿潤化(13条) |
| レベル3 | スレート・ボード・Pタイル等の成形板 | 比較的低い | 切断等をせずに取り外すのが原則(6条の2)・湿潤化(13条) |
元請業者は、事前調査の結果を発注者(施主)に書面で説明することになっています(大気汚染防止法18条の15第1項)。この結果が除去工事の計画や行政届出の基になるため、書面を受け取って保管してください。
STEP3:工事業者の選定と相見積もり

除去工事は複数の業者から見積もりを取ると比べやすくなります。金額だけでなく、見積書の項目・工法・許可証の有無を比較することが重要です。
見積書で確認すべき主な項目
- 建材レベルごとの単価と数量
- 隔離養生・負圧除じん装置・湿潤化の費用が含まれているか
- 廃棄物の区分(廃石綿等=特別管理産業廃棄物/石綿含有産業廃棄物)ごとの収集運搬・処分費用
- 行政届出の書類準備の費用の有無
- 完了報告書・写真記録の作成費用
- 現地調査費用(見積もり時の調査が有料か無料か)
「調査は不要」「書類は不要」と言う業者や、届出が必要な除去なのに即日着工を勧める業者は、法令違反を行っている可能性があります。避けてください。
STEP4:補助金の申請(使う場合は契約・着工の前に確認)
補助制度の有無・対象・申請の時期は自治体ごとに決まっています。契約・着工の前に申請が要るかどうかを、見積もりの段階で建物がある自治体の募集要項で確かめましょう。
主な補助金制度
| 制度 | 補助内容 | 上限額 |
|---|---|---|
| 国の交付金(社会資本整備総合交付金)を使った自治体の補助 | 吹付け建材の含有調査・吹付けアスベスト等の除去・封じ込め・囲い込みなど | 自治体ごとに異なる(窓口で確認) |
| 自治体独自補助 | 都道府県・市区町村ごとに異なる | 自治体により異なる |
国の交付金は自治体の補助制度に対して出るもので、個人が国に直接申請するものではありません。屋根材・外壁材などの成形板は国の交付金の対象(吹付けアスベスト等)に含まれないため、成形板の除去を補助する制度があるかは自治体ごとに確かめます。最新の募集状況・申請書式は各自治体の公式サイトでご確認ください。
STEP5:行政届出(届出対象の作業は開始14日前まで)
吹付け石綿や、石綿を含む断熱材・保温材・耐火被覆材の除去などの作業は、作業開始の14日前までに、発注者(施主)または自主施工者が、届出書(大気汚染防止法施行規則 様式第三の五)を都道府県知事(政令で定める市では市長)に提出する義務があります(大気汚染防止法18条の17・同法施行令10条の2・13条)。提出先の窓口は自治体で確かめてください。届出をしない・偽りの届出は3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(34条1号)。屋根材・外壁材などの成形板だけの工事は、この届出の対象外です。
届出書の主な記載事項(大気汚染防止法18条の17第1項):
- 発注者と元請業者(または自主施工者)の氏名・名称・住所
- 工事の場所
- 対象となる建材の種類・使用箇所・使用面積
- 作業の種類・実施の期間・方法など(18条の15第1項に掲げる事項の一部)
届出は施主の名義で行います。書類の準備を工事業者が手伝うこともあるため、見積もりの段階で「届出書類の準備費用が込みか否か」を確認しておくとよいでしょう。
STEP6:除去工事の実施と安全確認

吹付け材の除去や保温材等の切断等を伴う除去では、隔離養生の設置と負圧の保持・点検が法令上の義務です(石綿障害予防規則6条)。近隣への飛散モニタリング(大気濃度測定)は全国一律の法定義務ではありませんが、自治体の条例・指導で求められる場合があります。工事期間中は指定された立入禁止区域に入らないことが重要です。
工事中に施主として確認すべき事項:
- 隔離養生(ビニールシート等)が適切に設置されているか
- 事前調査の結果などが、見やすい場所に掲示されているか(石綿障害予防規則3条8項)
- 作業員が呼吸用保護具と作業衣または保護衣を着用しているか(石綿障害予防規則14条。隔離した場所での吹付け石綿の除去では電動ファン付き呼吸用保護具などに限る)
- 工事記録(写真)を定期的に撮影しているか
- 作業主任者(石綿作業主任者)が現場に配置されているか
疑問や不安がある場合は、都道府県労働局・労働基準監督署や、都道府県・市の大気汚染防止法の担当窓口に問い合わせることができます。違反が疑われる場合の通報も同じ窓口で受け付けています。
STEP7:廃棄物処分・マニフェスト受け取り
除去したアスベスト廃棄物は、廃石綿等(特別管理産業廃棄物)か石綿含有産業廃棄物かに区分して処分されます。建設工事の廃棄物は元請業者が排出事業者となり(廃棄物処理法21条の3)、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しは処分が終わると元請業者に送られます(12条の3)。施主は写しの提示を求めて、処分まで終わったことを確かめましょう。
アスベスト廃棄物の区分(廃棄物処理法):
- 飛散性アスベスト廃棄物(主にレベル1・2の除去物):廃石綿等(特別管理産業廃棄物)。埋立の前に固型化や薬剤による安定化などをして、耐水性の材料で二重にこん包する(廃棄物処理法施行令6条の5)
- 非飛散性アスベスト廃棄物(主にレベル3の成形板):石綿含有産業廃棄物(材質に応じてがれき類・ガラスくず等・廃プラスチック類などに区分)。最終処分場の一定の場所に、分散しないように埋め立て、表面を土砂で覆う(同令6条)
マニフェストの写しは、廃棄物が最終処分まで終わったことを確かめる記録になります。写しのコピーをもらって保管しておくと、将来の建物売却・再建築時に役立つことがあります。
費用の目安と変動要因
個人宅のアスベスト除去費用は建材レベル・面積・建物の構造により大きく異なります。以下は費用項目と変動要因の整理で、正確な金額は現場確認後、内訳を示した正式見積書でご確認ください。
| 費目 | 金額の確かめ方 | 備考 |
|---|---|---|
| 事前調査(書面+現地) | 見積もりで確認 | 建物規模・建材点数で変動 |
| 分析調査(JIS A 1481) | 見積もりで確認(含有ありとみなせば分析を省ける) | 検体数で変動 |
| レベル1除去工事 | 見積もりで確認(一般に最も高くなりやすい) | 隔離養生・負圧装置込み |
| レベル2除去工事 | 見積もりで確認(切断等を伴う場合は隔離・負圧管理が必要) | 保温材・断熱材 |
| レベル3除去工事 | 見積もりで確認(面積・足場・廃棄物量で変動) | スレート・成形板 |
| 廃棄物処分(廃石綿等・石綿含有産業廃棄物) | 見積もりで確認(区分ごとの単価と量) | 量・処分場距離で変動 |
| 行政届出の書類準備 | 見積もりで確認 | 業者により込み・別途あり |
費用が上がる主な要因
- 複数レベルの建材が混在している(複合工事)
- 高所作業・足場設置が必要(屋根・天井裏等)
- レベル1含有面積が大きい
- 建物内での作業(居住しながらの工事)
- 廃棄物の処分場が遠い地域
- 飛散が確認された場合の緊急対応措置
自分で除去・判断してはいけない理由
自分で除去する場合も、大気汚染防止法の事前調査・作業基準・届出の義務がそのままかかり、守れなければ法令違反になります。そのうえ中皮腫・肺がんという生命に関わるリスクを伴います。「少量なら大丈夫」「古い建物だから気にしなくていい」という考え方は誤りです。
- 法令違反のリスク:大気汚染防止法違反(届出をしない場合は3月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、作業基準適合命令などへの違反は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)・廃棄物処理法違反(不法投棄:5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはその併科)
- 健康リスク:吸入した場合、中皮腫(潜伏期間20〜50年)・肺がん(15〜40年)が発症する可能性。厚生労働省は、どれくらい以上吸えば中皮腫になるかは明らかではないとしている
- 近隣被害のリスク:飛散させた場合、近隣住民・家族への曝露、損害賠償請求を受ける可能性
- 将来の問題:適切な記録なしに工事を行うと、建物売却・保険適用時に問題が発生する可能性
「適正工事 = 有資格者 + 法令通りの工法 + マニフェスト交付」の3点セットを必ず確認してください。
よくある質問
Q1. 個人宅のアスベスト調査・除去はどこに頼めばいいですか?
A. 建築物石綿含有建材調査者(特定または一般。戸建て住宅の住戸の内部なら一戸建て等石綿含有建材調査者も可)が在籍する業者に依頼してください(石綿障害予防規則3条4項)。調査のみを環境調査会社・建築士事務所に依頼し、除去工事を別業者に発注することも可能です。複数業者から見積もりを取ると比べやすくなります。
Q2. 自分でアスベストを除去することはできますか?
A. 絶対に自分で除去しないでください。自分で工事をする人も大気汚染防止法の「自主施工者」として事前調査や作業基準を守る義務を負い、作業基準適合命令などに違反すると6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります(33条の2)。また、吸入した場合は中皮腫・肺がんのリスクがあります。必ず有資格者が在籍する専門業者に依頼し、法令に沿った飛散防止の措置をとってもらいましょう。
Q3. 個人宅のアスベスト除去にかかる費用の目安は?
A. 建材レベルにより異なり、個人宅の除去費用について公的な相場の統計は見当たりません。一般に、隔離・負圧管理などが必要になるレベル1や、切断等を伴うレベル2の除去は高くなりやすく、レベル3(成形板・スレート)は比較的低くなります。事前調査費用と、届出が必要な場合はその書類準備の費用も別途かかります。正確な金額は現場確認後、内訳を示した正式見積書でご確認ください。
Q4. 補助金はどのくらい出ますか?
A. 国の制度は、自治体が補助制度を設けた場合に国が自治体へ交付する仕組みで、補助の有無・金額・上限は自治体ごとに異なります。国の交付金の対象は吹付けアスベスト等の調査・除去などです。申請の時期は制度ごとに決まっているため、契約・着工の前に、建物がある自治体の募集要項で確かめてください。
まとめ
個人宅のアスベスト除去は「調査→補助金申請→届出→工事→廃棄物処分」の7ステップで進めます。2023年10月1日以降に着工する工事では、建築物の事前調査は要件を満たす調査者(戸建て住宅では一戸建て等石綿含有建材調査者も可)が行う必要があります(石綿障害予防規則3条4項)。補助金は申請の時期が制度ごとに決まっていること、届出が必要な作業は作業開始14日前までが届出の期限であることを必ず守ってください。自己判断での除去は、法令上の調査・作業基準の義務がかかるうえ健康リスクも高いため、調査者の修了証などを確認したうえで専門業者に依頼するのが安全です。
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