アスベストと中皮腫の関係|症状・労災・公的支援制度を解説

公開日:2026-05-19 最終更新:2026-10-11

本記事は医療情報の参考提供を目的としています。 具体的な症状・治療については必ず医療機関にご相談ください。健康被害に関する最新情報は厚生労働省石綿総合情報ポータル等の公的機関の情報をご確認ください。

中皮腫はアスベスト曝露が主因とされる悪性腫瘍で、肺や腹部の臓器を覆う中皮細胞から発生します。潜伏期間は20〜50年と非常に長く、労災や石綿救済法による公的給付制度があります。

国立がん研究センターは、胸膜中皮腫は「アスベスト(石綿)を吸い込んだことが発生の原因となっていることが多い」としています。本記事では、中皮腫の基礎知識・症状・診断・公的支援制度を、厚生労働省・環境再生保全機構の公開情報に基づいて整理します。

アスベストと中皮腫の関係|症状・労災・公的支援制度を解説

中皮腫とはどのような疾患ですか?

胸膜・腹膜・心膜・精巣鞘膜の中皮細胞から発生する悪性腫瘍です。アスベストを吸い込んだことが原因となっていることが多く、環境省の資料では、石綿ばく露から20〜50年の長い潜伏期間の後に発症するとされています。

中皮腫は発生部位により以下に分けられます(厚生労働省の労災認定のパンフレットは「胸膜、腹膜、心膜または精巣鞘膜の中皮腫」と書いています):

  • 胸膜中皮腫:胸壁の内側や肺の表面をおおう胸膜から発生
  • 腹膜中皮腫:おなかの内側をおおう腹膜から発生
  • 心膜中皮腫:心臓を覆う心膜から発生
  • 精巣鞘膜中皮腫:精巣の鞘膜から発生

国立がん研究センターによると、胸膜中皮腫は診断される人が人口10万人あたり6人未満の希少がんです。また「アスベストを吸い込んだからといって必ず発症するわけではありません」とされています。

どのような症状が出ますか?

どのような症状が出ますか?

胸膜中皮腫では、胸の痛み、せき、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感が起こります。いずれの症状も中皮腫以外でも現れるため、早期発見が難しい病気です。アスベストを吸い込んだ心当たりがある方は、受診のときに医師へ伝えてください。

胸膜中皮腫の主な症状(国立がん研究センター がん情報サービスより):

  • 胸の痛み
  • せき
  • 大量の胸水による呼吸困難・胸部圧迫感
  • 原因不明の発熱
  • 体重減少

これらの症状は他の呼吸器疾患でも見られるため、診断には胸部画像検査、胸水検査、生検等の専門的検査が必要です。気になる症状がある場合は早めに呼吸器内科・呼吸器外科を受診しましょう。

潜伏期間はどのくらいですか?

環境省の資料では、中皮腫は石綿ばく露から20〜50年の長い潜伏期間の後に発症するとされています。何十年も前に石綿を吸い込んだことが原因になることがあります。

厚生労働省の労災認定の基準でも、最初の石綿ばく露作業を始めてから10年未満で発症したものは、業務による中皮腫と認める要件から除かれています。石綿を含む製品の製造・使用等は2006年9月から原則として禁止されていますが(環境省資料)、それ以前に石綿を扱った方は、長い年月がたってから発症することがあります。

出典:環境省「石綿に関する基礎知識」、厚生労働省「石綿による疾病の労災認定」(確認日 2026-10-11)

労災認定はどう受けられますか?

労災認定はどう受けられますか?

所轄の労働基準監督署に労災請求書を提出します。アスベスト取扱業務への従事歴と医学的所見が認定の根拠となり、医療費・休業補償・遺族補償が支給されます。

中皮腫の労災認定の要件(厚生労働省のパンフレット「石綿による疾病の労災認定」より):石綿ばく露労働者に発症した胸膜・腹膜・心膜・精巣鞘膜の中皮腫で、次のどちらかに当たる場合です。

  • 胸部エックス線写真で、第1型以上の石綿肺所見がある
  • 石綿ばく露作業の従事期間が1年以上

ただし、最初の石綿ばく露作業を始めてから10年未満で発症したものは除かれます。中皮腫は診断が難しいため、病理組織検査で確定診断がされていることが重要とされています。同じパンフレットには、従事期間が1年未満でも業務上と認められた事例も載っているため、当てはまるか分からない場合も労働基準監督署に相談してください。

労災認定された場合の主な給付:

給付名内容
療養補償給付治療費全額
休業補償給付休業4日目から給付基礎日額の60%
傷病補償年金療養を始めて1年6か月たっても治らず、傷病等級に当たる状態の方
遺族補償給付労働者死亡時の遺族へ
葬祭料葬祭費用

出典:労働者災害補償保険法12条の8・14条1項(休業補償給付は「第四日目から」「給付基礎日額の百分の六十」)(確認日 2026-10-11)

石綿救済法とは何ですか?

労災対象外でアスベスト被害を受けた方(家族・周辺住民等)に救済給付を支給する制度です。環境再生保全機構が窓口で、医療費・特別遺族弔慰金等が対象です。

正式名称「石綿による健康被害の救済に関する法律」(2006年3月27日施行)に基づく制度です。環境再生保全機構は、労災保険などで補償されない中皮腫・肺がん・著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の方と、これらの病気で亡くなった方の遺族を対象としています。例えば次のような方です:

  • アスベスト工場周辺の住民
  • 労働者の家族(家族曝露)
  • 自営業者・主婦等

なお、時効で労災保険の遺族補償給付を受けられなくなった労働者の遺族には、同じ法律に基づく「特別遺族給付金」があります。こちらの窓口は労働基準監督署です(環境再生保全機構「労災給付等との関係」)。

主な給付内容(独立行政法人環境再生保全機構「救済給付の概要」より):

給付名内容
医療費自己負担分の支給
療養手当月額103,870円
葬祭料199,000円
特別遺族弔慰金2,800,000円
特別葬祭料199,000円

※ 特別遺族弔慰金・特別葬祭料は、救済制度に申請する前に指定疾病で亡くなった方の遺族への給付です。金額は2026年10月11日に環境再生保全機構の公式サイトで確認したもの(令和7年4月1日現在の額)です。改定されることがあるため、請求の前に最新情報をご確認ください。

予防のためにできることは?

既存建物の解体・改修時に法令通りの事前調査と除去工事を行うこと、アスベスト曝露歴がある方は医療機関で曝露歴を伝えて相談することが大切です。

新規のアスベスト曝露を防ぐためには、解体・改修工事を有資格者に依頼することが社会全体の予防策となります。一般の方ができる対策:

  • 建物を改修・解体する際は、築年数にかかわらず事前調査が行われるか確かめる(規模の大小にかかわらず必要)
  • 資格者が調査しない業者や、届出が必要な除去工事なのに「即日除去」を勧める業者は避ける
  • 過去にアスベストを扱う仕事をしていた方は、医療機関で曝露歴を伝えて相談する
  • 家族曝露の可能性がある方も、気になる症状があれば早めに受診する

よくある質問

Q1. 中皮腫はアスベストでしか発症しないのですか?

A. 国立がん研究センターは、胸膜中皮腫について「アスベスト(石綿)を吸い込んだことが発生の原因となっていることが多い」としています。アスベストを吸い込んだ人が必ず発症するわけではありません。診断や原因については医療機関にご相談ください。

Q2. 労災認定はどう申請しますか?

A. 所轄の労働基準監督署に労災請求書を提出します。アスベスト曝露歴の聞き取り・職歴調査・医学的所見が認定の判断材料となります。

Q3. 労災と石綿救済法は併用できますか?

A. 同じ病気について労災保険などの給付が行われる場合、その分は救済給付が支給されません(石綿健康被害救済法26条)。救済給付は、労災保険などで補償されない方(家族・周辺住民など)が対象です。時効で労災の遺族補償給付を受けられなくなった遺族には、同法の「特別遺族給付金」があり、窓口は労働基準監督署です。

まとめ

中皮腫はアスベストを吸い込んだことが原因となっていることが多い悪性腫瘍で、長い潜伏期間を経て発症します。労災・石綿救済法による公的支援制度があるため、心当たりのある方は労働基準監督署や環境再生保全機構へ早めにご相談ください。新規の曝露を防ぐためには、解体・改修時の事前調査と有資格者による除去工事が不可欠です。

参考リンク(公的一次ソース)

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